産後の大量出血に対して、Bakriバルーンという物を使う事があります。







https://mobileportfolio.cookmedical.com/public/16990/16990  より引用




Bakri は「バクリ」と読んでいますが、この風船状のものを子宮内に入れて膨らませることで、胎盤が剥がれた後から出血している部分をまとめて圧迫して、一度に止血してしまおうという非常に優れた方法です。



基本的に麻酔も必要なく、分娩した直後にそのまま入れることができるため、使い方も簡便なのですが、今回はこのBakriバルーンがうまくいかないリスクに関して見ていきたいと思います。









この論文では、2017年から2021年にかけてBakriバルーンを使った599人を対象に調べています。


出血をコントロール出来ず、外科的治療が必要になった場合を「失敗」として定義すると、Bakriバルーン成功率は83.0%(497人)でした。



失敗群では、バルーン使用前後での出血量が明らかに多く、失敗した102人のうち、99人は子宮動脈塞栓術、3人は子宮全摘、1人はB-Lynchという縫合が行われました。



子宮動脈塞栓: 足の付け根の太い血管からカテーテルを入れて、子宮を栄養している血管を選んでスポンジを詰めてしまい、子宮への血流をブロックする方法。



B-Lynch: 開腹手術にて子宮の外側に縫合糸をかけて子宮そのものを縛りあげて、外側から圧迫して止血する方法。



Bakriバルーンが失敗するリスクとしては、



・双胎妊娠: 9.68倍


・前置胎盤: 4.45倍


・バルーン挿入時の出血量が1,135ml以上: 3.35倍


・経産婦: 2.72倍


・体外受精: 2.00倍



となっていました。


この論文では産後の大量出血に対して、8割以上の確率でBakriバルーンが効果的である、という結果でしたが、双胎や前置胎盤などは、やはりリスクが高い結果になっていました。



Bakriバルーンは、それほど珍しいものではないので、多くの分娩施設にあるとは思うのですが、もしもそれでうまくいかなかった場合には、動脈塞栓術や緊急開腹手術が必要になることもあります。



そして何より輸血も必要になってきます。



そのため、特に双胎や前置胎盤、場合によっては体外受精での妊娠の方も、分娩先として設備の整った施設を選択した方が安全ですので、施設選びの際の参考にしてみてください。