今回は、良性の卵巣腫瘍である


皮様嚢腫


の手術方法について説明したいと思います。



皮様嚢腫は、別名「奇形腫」「デルモイド」と言った呼び方がありますが、卵巣腫瘍の中に「脂肪」「髪」「歯」などが入っている良性腫瘍となります。



ブラックジャックという漫画に出てくるピノコというキャラは、この腫瘍の中身から作られたと言われていますが、さすがに人体が作られるほどの臓器が中に入っていることはありません。



良性腫瘍なので、急いで手術する必要はないのですが、飲み薬で縮めることは出来ず、年月と共に大きくなるため、いずれは手術をして取る必要があります。



そこで、今回はこの良性腫瘍の術式についての論文を見ていきたいと思います。








この論文では、10〜29歳で皮様嚢腫の手術を受けた患者さんの中で、5年以内に再発した方を対象に検証しています。


純粋に再発した人を対象とするために、術後1年以内に皮様嚢腫が見つかった人は、取り残してしまったものとして除外しています。



手術の方法としては、卵巣嚢腫核出術(卵巣腫瘍だけを取り除いて、卵巣そのものは残す術式)と、卵巣摘出術(卵巣腫瘍がある方の卵巣そのものを全て摘出する術式)とに分けて検証しています。



再発率を比較しところ、



卵巣嚢腫核出術372人のうち、再発は11.2%



卵巣摘出術70人のうち、再発は20.3%



と、卵巣摘出した方が再発率が高い結果となっていました。




卵巣嚢腫核出術で再発率が高くなるリスクとしては、腫瘍の大きさ:2.59倍、両側性:2.65倍となっていました。




個人的には卵巣腫瘍だけを取る「卵巣嚢腫核出術」の方が再発率は高くなると思っていたのですが、意外と卵巣摘出の方が再発率が高い結果となっていました。



再発率が高くなるリスクとして「腫瘍の大きさ」があり、術式を考えるときに腫瘍が大きいと卵巣摘出を選ぶことがあるので、卵巣摘出群では相対的に腫瘍が大きかった為に再発率が高くなっているのかもしれません。



いずれにせよ、この「皮様嚢腫」という腫瘍は、再発率が1〜2割と、それなりの高さでありますので、もし手術を受けた方がいましたら、定期的に検査を受けるようにして下さいね。