出産する時に、多くの病院では胎児心拍モニターというのをチェックします。これは妊婦さんのお腹の上に機械をつけて、お腹の張りと赤ちゃんの心拍数をチェックし、赤ちゃんが元気かどうかを調べる検査方法です。


多くの場合、赤ちゃんの心拍数を見て元気いっぱいなことを確認できるのですが、稀に急いで赤ちゃんを出してあげないといけないような場合があります。


そして、元気いっぱいとは言い切れないんだけど、急いで出してあげないといけない訳でもない、というグレーゾーンの場合も良くあるのです。


グレーゾーンとなった場合には注意して経過を見ていく必要があるのですが、医学的に何かできるかというと、、、

赤ちゃんが一時的に苦しくなっているのなら、妊婦さんに酸素を与える事で、間接的に赤ちゃんの苦しさも解消されるのではないか、という理由から、妊婦さんに酸素を投与する事があります。


今回は、そんなグレーゾーンに対して妊婦さんに酸素を投与した場合の論文をご紹介したいと思います。



先程説明したように、赤ちゃんが苦しくなった時に妊婦さんに酸素を投与することがあるのですが、その量や時間に関しては、どの程度が最も有効であるかはわかっていません。


そこで、この論文では、分娩中に赤ちゃんが苦しいサインを示し、何らかの処置が必要と思われた場合に、10L/minの酸素投与と、通常の室内空気を投与した場合を比較しました。


対象となった99人を、酸素投与された時間別に、上位25%に入る長時間投与群と、それ以下の短時間投与群、そして室内空気投与群に分けて、臍帯静脈と臍帯動脈の酸素分圧を調べたところ、、、


臍帯静脈の酸素分圧は、酸素を長時間投与した群では 25.5mmHg だったのに対し、短時間投与した群では 32.5mmHg と、長時間投与した方が酸素分圧が低い結果となっていました。


一方で臍帯動脈の酸素分圧は、酸素投与した時間で違いは認められませんでした。


また、室内空気投与群でも、酸素投与群でも、臍帯動脈・静脈の酸素分圧に違いは認められませんでした。


以上のことから、長時間酸素を投与しても、臍帯の酸素分圧を上昇させる事はできず、逆に臍帯静脈の酸素分圧を下げる可能性すらあり、それは胎盤から赤ちゃんへの酸素移行も悪化させる可能性があると言えます。


このように、分娩中に赤ちゃんが苦しいのかも、というサインを示した時、ただ単に酸素を投与さえすればいい、という話ではないという事が言えそうですね。


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