逆子や前回帝王切開だと、多くの場合は帝王切開になるのですが、今回は帝王切開の後の皮膚の傷をどうやって縫うかについての論文をご紹介したいと思います。
こちらの論文では、緊急帝王切開をした300人をランダムに3グループに分けました。
グループAは、ステープラーを使用しました。ステープラーは医療用のホッチキスのようなもので、抜糸のように退院前にホッチキスを抜くことになります。
カチカチっと傷を寄せていけるのでスピードは早く、ホッチキスを抜くときも、上手くやればほとんど痛みがありません。
グループBは、3-0モノクリルいう糸で真皮縫合という方法。
これは、真皮という皮膚の表面から数mm深い部分を縫って傷を寄せる方法です。
溶ける糸で縫うため、抜糸はありませんし、皮膚表面は自然と寄るので、傷も綺麗に治りやすい方法です。
グループCは、2-0ナイロンという糸でマットレス縫合。
これは言葉では説明しにくいので、下の図をご覧ください。
このように、一度入れた針を皮膚表面に出して、再度縫うという感じになるので、仕上がりは皮膚表面に糸が出ることになります。
抜糸は必要ですし、傷をグッと寄せる感じになるので、個人的には皮膚をこのやり方で縫ったことはありません。
評価としては、感染、傷の段差、再縫合の必要性、抗生物質の使用という点です。
その結果、全体での合併症は16.6%でしたが、グループAで最も確率が高くなりました。
中でも感染の確率が最も高い合併症でした。
以上のことから、ステープラーが最もリスクを伴う縫合方法という可能性があります。
今まで縫ってきた経験では、確かに真皮縫合をして術後に再縫合が必要になったことはほとんどありません。
ステープラーの場合には、傷が少し感染したり、ホッチキスを取った後に傷が開くということも、稀にはありましたが、ものすごくリスクの高い方法ではないので、ステープラーが絶対ダメとまでは言い切れない印象です。
個人的には、細かい作業が好きですし、手術の傷痕というのは、患者さんにとってずっと付き合っていくものですから、出来るだけ綺麗に縫いたいですし、手術直後に傷があるのがわかりにくい仕上がりにしたいので、真皮縫合が好きでした。
傷の縫い方は、執刀医個人のやり方だったり、病院ごとに決まりがあったりするので、もし帝王切開になる時は、傷の縫い方を聞いてみてもいいかもしれないですね。