妊娠36週6日までに生まれることを早産と呼び、赤ちゃんの体がまだ未熟な状態で生まれてくることになります。


そのため、できるだけ37週近くまでお母さんのおなかの中にいてもらいたいのが産婦人科医としての希望です。

 

それでも、様々な理由によって早産となってしまうのですが、中でも双子というのは、それだけで早産のリスクになります。


本来であれば、お母さんのおなかの中で3000gくらいの赤ちゃんが1人いる子宮の中に、2人も赤ちゃんが入るのですが、なかなか出産予定日まで到達しないんですね。

 

実際に双子の赤ちゃんの妊婦健診をしていると、30週を超えるあたりから、本当にお母さんのお腹が大きくなって、こんなに子宮やお腹の皮膚って広がるんだと驚くほどです。

 

そこで、双子の赤ちゃんが早産になった時に、1人は早産になったけれど、もう1人はまだお母さんのお腹の中にいてもいいんじゃないか、、、という、非常に興味深い論文が見つかったのでご紹介したいと思います。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28210482

この論文では、1人目の赤ちゃんが産まれた後に臍の緒を結んでおいて、2人目の赤ちゃんの出産を最低でも24時間は遅らせる方法を検証しています。


1992年から2014年に発表された13の論文における128人の妊婦さんを対象として、1人目が生まれた週数は18週から32週までと幅広くなっています。

つまり、18週から21週6日までの赤ちゃんは流産となり、残った1人を何とか22週以降の出産までたどり着かせたいという方針になっています。


1人目が生まれた後に行われる治療方針には統一されたものがなく、子宮の収縮を抑える薬を使ったり、抗生物質を使ったり、子宮の出口を縛る手術をしたりと様々な方法が試みられています。

 

その結果、1人目の赤ちゃんより出産を遅らせた2人目の赤ちゃんの方が死亡率が0.44倍と低い結果になりました。


また、1人目が24週以降に生まれた場合に限って検討しても、2人目の赤ちゃんの死亡率は0.37倍と低くなっていました。


一方で、お母さんへの合併症に関しては、感染症を起こしてショック状態になったり、大量出血することが、確率は低いものの報告されています。母体死亡に関しては1例もありませんでした。

 

 

この論文の中で検証されている13の論文のうちの一つを見てみたいと思います。


https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22562385

この論文では、双子のうちの1人が平均20週で流産となってしまい、その後に頸管縫縮術という子宮の出口を縛る手術をした5例について検証しています。


2人目が生まれたのは、平均して72日後、最長で120日後となりました。平均すれば妊娠28.8週で分娩となっており、死産の確率は20%、NICUに入院となった確率は75%となりました。

 

1人目が20週で生まれてしまった状況で、平均して72日間も妊娠期間を延長できるのは、非常に有効な治療法だと言えます。


例えば、妊娠24週で生まれた場合と、妊娠28週で生まれた場合には生存する確率も、後遺症が残るかどうかという確率も圧倒的に違ってくるため、本当のこの時期の1週間、2週間というのは貴重な時期になるからです。

 

そこで、最近の論文についても探してみました。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26412996

こちらは、2件の双子に関して報告した2015年の論文です。


1人目が生まれた週数は17週5日と22週1日で、子宮の収縮を抑える薬や抗生物質を使って、残った赤ちゃんの妊娠期間延長をはかり、最終的には、64日後と16日後に2人目が生まれています。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31620585

こちらの論文では、妊娠16週で破水して、その3日後に1人目の赤ちゃんが産まれ、残された2人目の赤ちゃんの妊娠期間を長くするために、子宮の収縮を抑える薬や抗生物質を使っています。


子宮の出口を縛る手術は行われていません。最終的には、128日間も妊娠期間が延長し、34週5日で出産となっていて、1歳健診で健康な赤ちゃんとして成長していることが確認されています。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31160478

こちらの論文では、妊娠25週で1人目の赤ちゃんが死産となってしまい、子宮収縮を抑える薬と抗生物質を使って、死産後2日目に子宮の出口を縛る手術をしています。その結果、2人目の赤ちゃんは妊娠36週で出産となっています。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28889767

こちらの論文では、妊娠21週3日から23週6日までに1人目が生まれた3例の双子について検証しています。治療法としては、子宮の収縮を抑える薬と抗生物質を使っていて、子宮の出口を縛る手術はしていません。

 

平均して6.33日後に2人目が生まれていて、6人の双子のうち、4人は亡くなってしまいました。

NICUの入院期間は、1人目に生まれた赤ちゃんは平均72日間、2人目に生まれた赤ちゃんは平均39.5日間でした。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31127078

今までの論文はすべて1人目の出産が経腟分娩だったのですが、この論文では、1人目が帝王切開で生まれて、2人目を子宮の中に残した例が報告されています。


1人目の妊娠週数は不明でしたが、破水して帝王切開にて出産となり、出生体重は528gでした。


この体重から推測すると、およそ妊娠22週~23週程度だったと思われます。


もう1人の赤ちゃんを子宮の中に残したまま、手術を終わり、子宮の収縮を抑える薬と抗生物質を使って、術後10日目に2人目の赤ちゃんが産まれています。

 

以上のように、双子の赤ちゃんの1人目が非常に早く産まれた場合には、出来るだけ2人目の赤ちゃんの成熟を期待して、様々な治療法で2人目の妊娠期間の延長を測る選択肢があると言えます。

 

ほとんどが1例や2例など、かなり数の少ない報告として論文にされていて、かなり限られた治療法にはなりますが、早い週数での妊娠期間延長というのは、非常に有意義な治療であることは間違いありません。

 

不妊治療の結果、双子となることは決して珍しい事ではなく、こういった治療の選択肢も多くの病院に広まっていくのではないでしょうか。