「ペール・ギュント」兵庫公演大千穐楽&原作読了 | Natsuko Navi 別館 漫画家/運命鑑定 

「ペール・ギュント」兵庫公演大千穐楽&原作読了

前後しましたが、大晦日は「ペール・ギュント」大千穐楽を見守ってきました。

 

席はP列と後方ですが、わたしの好きなシモ手席。

この舞台は、後方席でもあまりオペラグラスを使わないで、全体を楽しみました。

東京、兵庫どちらも中規模劇場で見やすかったですし。

共に縦に高さがあるところも特徴でした。

やはり劇場に合わせた演出効果だったのでしょうね。

 

兵庫の、少なくとも最後の2回、ラストシーンはペールがモクモクのスモークを浴びるのですが、このスモークがあまり出てこず、浦井くんはびっしょりずぶ濡れになっていました(^_^;

仰向けになるところもあり、さすがに水滴をぬぐってしまうような仕草もあって、大変そうだなと。

あと、お気に入りのボタン作りのシーン。

ボタン作りが何か首から提げた機械から「命令書」をペールにぺりっと破って示すところ、わたしが見た限り一度だけ命令書が出てこなかったんですよね。

ボタン作りの辻田さんが必死で引っ張るのですが、出てこないとあきらめて、命令書を吐き出す本体を使ってお芝居を続けることに…(^_^;

でも、辻田さんも浦井くんも何でもないようにこなしていて、初めて観た人は全く違和感なかったと思います。

 

 

東京公演から、結局帰省に合わせて兵庫公演の千穐楽まで観ることが出来て、とても楽しかったです。

実は、帰りのバスの時間が心配で、カーテンコールは最後まで見ないで飛び出しちゃったんですけど…

バスターミナルでは結構時間が余ったので、慌てなくて良かったのに~と自分を責めました(T_T)

でも、浦井くんのご挨拶までは粘りました。

韓国人キャストさんは、終演のその足で帰国だったとか。

慣れぬ外国で、稽古から長い本番を安定してこなし、素晴らしいパフォーマンスでした。

さすがにヤンさんが信頼して連れてこられた精鋭の皆さんだったのではないでしょうか。

日本人キャストの面々も、その日のうち、かどうかわかりませんが、早々に東京へ帰ったのでは。

浦井くんも今日は日比谷シャンテでTENTHの本番でしたからね。

わたしとしても素晴らしい出会いがあり、今後もキャストの皆さんのお仕事を見守って行きたいです。

 

さて、舞台と並行して読んでいた原作。

さっさと読了したかったのですが、兵庫へ持って行き忘れ、帰宅してからやっと残りを読みました。

意外に原作に忠実なところ、時代的に変えたところ…舞台を見込んで読むと、とてもわかりやすいですね。

 

これは上演を想定しない劇詩として書かれた作品だそうですが、そのせいなのか容赦なく長セリフのシーンが印象的。

特に最後の方かな。

「うわー、浦井くん言ってたなあ。そのままだわ」

という感じです。

確かに浦井くんのセリフ量はすごかった。

苦手なところもあったみたいで、セリフが抜けたり順番が変わったり、なかなか苦慮していましたが、聞いた感じは全く違和感ないんです。

他の長セリフは毎回完璧でしたし。

舞台の上にいる人は、何があっても何事もないかのように見せてしまうのがすごいですよ。

 

舞台を見ていていくつか疑問があって、たとえば後に恋人になるソールヴェイの父は、牧師なのに村人に冷たい扱いを受けています。

不思議だったのですが、原作では牧師ではなく、よそ者の一家として描かれていますね。

特に虐げられてもいないし、娘に厳しくもなく、何ならペールに「あとで娘と踊っていいよ」くらいの感じです。

あと、ソールヴェイには幼い妹がいて、ペールと姉の間でメッセンジャーをしたりします。

 

でも、ペールと気持ちが通じるシーンは、かなり舞台とイメージが重なります。

ペールはソールヴェイに対して本当に純真で、彼女を汚してはいけないと心に誓います。

舞台でわたしが好きだったシーンの一つが、ペールがソールヴェイに名を尋ねるところ。

軽い調子で名を訊きながら、答えようとするソールヴェイを見てハッとなる。

この娘は他の女とはちがうと。

その表情の変化がとても浦井くんらしくて、すてきなシーンだと思います。

ちなみに、このときペールは20歳。

ソールヴェイは堅信礼をうけたばかりだそうです。

中学生くらいの年齢でしょうか。

初々しいですね。

 

ボタン作りも、初めて見ると「いきなり何?!」という存在ですが、原作にちょこっとエピソードが出てきますね。

ペールのおじいさんはとても裕福で、娘の婿である父のせいで家が落ちぶれる。

そんな昔、ペールが父親に錫をねだって使ってボタンを作る、みたいな思い出が出てきます。

でもまあ、やっぱり「何故?!」なんですけど(笑)

 

ボタン作りは、舞台は可愛い小僧っぽい辻田さんがさえまくりでしたが、原作はどうやらおじいさんみたいです。

でもしっかり出てきますし、割合原作に忠実な脚本になっています。

もちろん、魅力的な辻田さんのパフォーマンスで見られて幸せです。

 

原作を見て一番びっくりしたのは、最後の方に出てくる冷たい牧師さん。

この舞台は、結構怖い感じの人が出てきましたが、その中でも個人的に一番怖かったのがこの牧師さん。

自分の罪を証明しようとするペールに対して、「そんな物は罪とは言えない」とけんもほろろ。

でも、原作ではどうやら牧師ではなく、悪魔っぽいです。

原作でも、ペールは牧師だと思って近づくので、見た目がそうなのでしょう。

舞台では、牧師の衣装に、目立たないですが柄が入っていて、変な服だなあと思ってたんです。

悪魔的な存在なら、人身売買も武器商売も、大して責めはしないでしょう。

 

舞台でも、ラストは本当はどうなったのかなあ、というのがはっきりしなかったのですが、原作でもそんな感じです。

ペールはおのれ自身であることを証明できて、鋳物柄杓に入らずにすんだのか、すべてを受け入れて蕭々と死んだのか…

でも、はっきり描かれていなくて観た人の判断にゆだねる、ということなのねとわかったのでOKです(笑)

演出のヤンさんも、それを大切にしていらっしゃったようですから。

 

他のバージョンのペール・ギュントを見たことがないので、また機会があったら見たいですね。

ほとんど毎年どこかでやっているような、人気演目ですし。

ただ、これだけは言えますが、ペール役の役者さんが相当魅力的でなければ難しいでしょうね。

ともかく、浦井くんのお陰でわたしも名作に触れることが出来、とても良い時間を過ごすことが出来ました。

良い年越しでした(^^)

 

 

 

全然関係ないですが、今ニュースを見ていたら、池坊保子さんという人が、「相撲は言うまでもなく国技であり…」と言っていて、びっくり仰天なんですけど( ̄□ ̄;)

相撲は別に国技じゃありませんよ。

勝手に決めないでもらいたい。

このおかしな特権意識って、一体何でしょうね。