礼拝音声
聖書箇所:2テモテ 3:14-17
説教題:みことばに留まりなさい
序論
これはパウロがテモテに宛てた第二の手紙です。彼が牧会者として担っていた務めは、Ⅰテモテ1:3–4に記されているように、エペソの諸教会を偽りの教えから守ることでした。この時パウロは人生の終わりが近づいており、この手紙は遺言のような意味合いを持っています。朗読箇所の中心的メッセージは「みことばに留まりなさい」です。偽教師たちは信徒たちを悩ませ、迫害さえしていました(12–13節参照)。その状況の中でパウロはみことばに留まることを勧めています。
語句研究:「とどまっていなさい」という言葉は、ヨハネ15:4–9でも用いられており、共通の意識が有ります。では、私たちが神の教えと聖書に「とどまり続ける」ために、みことばの性質、本質を確認してみましょう。
Ⅰ.正統で信頼に足るみことばにとどまりなさい(14節)
1. テモテは使徒パウロから福音を学びました(14節)。「使徒」とは「主人に忠実な使者」という意味であり、その教えはイエスの教えに忠実で真実です。
2. テモテは幼い頃から聖なる書(旧約聖書)を知っていました(15節)。母親がユダヤ人で、おそらく5歳前後から聖書に慣れ親しんだと思われます。
3. 聖書は神の霊感によるものであり、ゆえに真実であり、信頼に足ります(16節)。
// パウロがテモテの人柄と資格を述べる際、偽教師たちを念頭に置いていたと思われます。偽教師たちはテモテとは正反対でした。
1’) 彼らは使徒ではありませんでした。
2’) 彼らは伝承、系図、作り話、さらにはギリシア哲学といった誤った情報源に頼っていました。
3’) 彼らの教えは神からではなく、人間の高慢から出ており純粋な動機に基づくものではありませんでした。
Ⅱ.救いへと導く力のあるみことばにとどまりなさい(15節)
1. みことば(当時は主に旧約聖書)は明確にイエスを指し示しています。ルカ24:25–27で、イエスご自身のことを旧約からご自分について説明されました。今日私たちはさらに新約聖書も与えられており、より明確にキリストを知ることができます。
2. みことばは私たちがイエスを理解し、確信する助けとなります。「確信している」(14節)と「知恵があるようにする」(15節前半)は、ともに真の理解に至るという意味を含んでいます。
3. その条件は「キリスト・イエスにある信仰によって」です(15節後半)。みことばは信仰を呼び起こし、私たちを救いへと導きます。しかし、旧約聖書を持っていた人々でも、救いに至るイエスへの信仰を欠いていることもあったのです。
// 異端の教えは今日も教会に入り込もうとします。たとえば「全能神教会」や「新天地」などがあります。警戒しなければなりません。
Ⅲ.私たちを十分に整えるみことばにとどまりなさい
聖書は真実で神の霊感によるものですから、その良い御性質が私たちの生活に反映され、有益となります(16節)。語句研究:有益=助けとなる、役立つ、有利な。
パウロはみことばの有益さを次のように述べています:
1. 教え――健全な教訓、教理を示すこと。
2. 戒め(誤りを正すこと)――理論的に誤りを指摘し、反論すること。
3. 矯正――正しい状態へと立ち戻らせ、品性を改善すること。例えば互いに愛し合うこと、御霊の実を結ぶことについて。
4. 義の訓練――特に子どもの教育に用いられる語で、徳を高めるための鍛錬を意味する。「義において」との語は、神に喜ばれる状態を表します。偽りの教えは決して義に至らせることはありません。
みことばにとどまる時、私たちは あらゆる良いわざのために十分に整えられます。
語句研究:十分に整えられた=完全に仕上げられ、目標に到達した状態。
良い=役に立つ、喜ばしい、尊い。
みことばにとどまるなら、私たちのわざは良く、役立つものとなります(ヨハネ15:4–9参照)。反対に、偽りの教えは無価値で、プライド、混乱、不安、さらには迫害を生み出します。思いあがって仲間を見下すようになり、見下された方は自分の信仰や救いについて不安になったりするものです。だからこそパウロはテモテに「みことばを宣べ伝えなさい」(4:2)と強く命じたのです。
まとめ
パウロはテモテにみことばにとどまるように勧告しましたが、同時にテモテの務めは、偽りの教えによって他の人々の信仰が破壊されないよう、教会に神のみことばにとどまるよう励ますことでした。
1. 正統で信頼に足るみことばにとどまりなさい(14–16a節)
テモテの信仰は使徒パウロと聖書からの健全な教えに基づいていました。聖書は神の霊感によるもので、完全に信頼できます。私たちの確信は、人間の思想ではなく、神の真理である聖書に基づいています。
2. 救いへと導く力のあるみことばにとどまりなさい(15節)
旧約聖書は明確にイエス・キリストを指し示します。みことばは救いに至る知恵と理解を与え、信仰と結びついて私たちを救いへ導きます。私たちは福音をゆがめる偽りの教えから身を守る必要があります。
3. 私たちを十分に整えるみことばにとどまりなさい(16–17節)
神の霊感によるみことばは私たちの人格を形づくり、有効な奉仕へと整えます。教え、戒め、矯正し、義の訓練を行い、あらゆる良いわざのために私たちを完全に備えるのです。
パウロがテモテに、そして私たちに告げるメッセージは明確です。
神のみことばは真実であり、救いをもたらし、あらゆる良いわざに十分な力を与えるものです。信者はみことばにとどまり続けることによって、忠実で実を結び、キリストに堅く立つ者となります。