礼拝音声
聖書箇所:ローマ1:1-7
説教題:神の福音
導入)
今回の聖書朗読は、パウロのローマのクリスチャンへの手紙の冒頭のあいさつ文です。手っ取り早く言えば、パウロより、ローマにいるクリスチャンへ、という簡単なものなのですが、パウロは6節を割いて、自分についての説明をしています。それは、パウロがローマの教会を開拓をしておらず、彼らに会ったこともなかったからかもしれません。しかし、単に自己紹介に留まらず、その中には、今日の私たちにも大事な要素が含まれています。その中心的な要素は、神の福音です。パウロは、最初に自分が神の福音のために選び分けられた者だと述べています。パウロが、神の福音の要素をどのように語っているかを見てみましょう。
本論)
1)神の福音は信頼に値する(2節)
パウロは最初に神の福音が信頼に値する要素を述べているように見えます。一つ目は、神が福音を約束されたからです。神は契約に忠実で善なる方です。その約束は信頼に値するのです。二つ目に、それは預言者たちを通して約束されたからです。預言者は複数形です。繰り返し約束の成就が確約されたのです。三つ目は、前から約束されたからです。創世記3:15節には、すでにサタンの頭を砕く男子が与えられることが約束されています。最後に、それは神のみ言葉、旧約聖書を通して約束されたからです。
2)神の福音は私たちの主イエスについてである(3節―4節)
パウロはキリスト論において大事なことをここで述べています。イエスはダビデとの約束により、ダビデの子孫として生まれました。そのことは、イエスが人間の形を取って生まれたことも意味します。それは、父なる神に対して、罪の贖いの血を流す必要が有ったらからであり、悔い改めの人間の執り成し手となるためでもありました。また、イエスは神と聖霊の力で生まれてこられました。聖霊によって身ごもったことは、マタイ1:20において、ガブリエルがヨセフに告げています。また、印と証明のための奇跡の業をなし、神の証明として、死者の内よりよみがえられました。イエスのよみがえりは、神の福音の中で重要な要素です。よみがえりの信仰がなければ、イエスを信じるという告白が無に帰することは、1コリント15章において、パウロが説明しています。
3)神の福音はイエス・キリストを通して私たちに恵みを与える(5節―7節)
5節、6節も、一人称複数形が用いられていますが、直接的にはパウロのことと言えます。しかし、ここに表わされている恵みも、私たちに関係有るものになっています。一つ目は、信仰の従順です。パウロの伝道の結果、人々がそれに導かれるのですが、それは、私たち、受け入れた人々への恵みと言えます。福音は信じる者に、イエスキリストへの信仰をもたらし、信仰はイエスの教えへの従順に導きます。イエスを主と仰ぐのですから、従順は当然なのです。二つ目は、使徒の伝えた正統な福音を受け継いだことです。使徒は、主人の伝言を忠実に伝える伝令という意味が有ります。パウロは異邦人への福音伝道を委ねられ、それが私たちにも届いたのです。三つ目は、イエス・キリストに属する者の立場を与えられたことです。6節と7節で、私たち異邦人も神に召され、神に愛されて聖徒と呼ばれる立場をいただいたことがわかります。四つ目に、私たちは神とイエス・キリストの平安をいただくことです。挨拶の定型文ではありますが、パウロはローマのクリスチャンに、神とイエス・キリストの恵みと平安を祈っています。恵みについては確認したばかりですから、平安について考えてみます。私たちが父なる神がいただく平安についての教えは、山上の垂訓に見出されると思います。神が、私たちを野の花や鳥よりも大事にして守り養ってくださることを信じる信仰の平安です。イエス・キリストの平安は、罪の赦しによって神と和解し、その怒りを恐れなくてよいことです。また、永遠の命と天国で受け継ぐ相続の希望が有ることも、平安の基となるものです。
まとめ)
1)神の福音は信頼に値する(2節)
福音は神の約束であるために信頼に値することなどを確認しました。更に、旧新約聖書の写本が正確であることも信頼性が高いことの理由として挙げることができるでしょう。死海文書が発見された時に、現代に伝わっている旧約聖書と殆ど変わらないことが証明されています。新約聖書には、どの古文書よりも多くの写本が存在し、かつ、その写本間の違いは0.5%であると、神学者のノーマン・ガイスラーは述べています。
2)神の福音は私たちの主イエスについてである(3節―4節)
パウロが活躍した時代は、福音というのは、新しい皇帝が即位した知らせのことでした。その皇帝の元で、帝国の安泰が約束される期待が持てることが、福音、良い知らせということだったのです。
しかし、神の福音は、皇帝ではなく、永遠の命にいたる救いの道をもたらすメシア、イエス・キリストの到来の良きしらせです。このキリストによって、私たちは罪を赦され、復活の信仰を持ち、永遠の命の希望に生きるのです。
3)神の福音はイエス・キリストを通して私たちに恵みを与える(5節―7節)
私たちは、神の恵みを数えて、感謝する生活を送らなければなりません。信仰の従順をいただいたこと、正統な福音を受け継いだこと、イエスに属する者へと召されたこと、神とイエス・キリストの平安をいただいたことを日々心に繰り返し思い起こして生きるのです。