礼拝音声

聖書箇所:使徒行伝19:23-41
説教題:騒動が明らかにしたこと

導入)
  パウロの2年と3か月のエペソ伝道を通して、多くの人が信仰を持ちました。今回の聖書箇所も、彼の伝道が成功したことを示しています。同時に、人の罪の性質とサタンの狡猾さも示されている箇所と言えるでしょう。聖霊を通してルカが私たちに伝えようとしていることを確認してみましょう。

本論)
23節 そのころ、というのは、パウロがエペソを離れてエルサレムに戻るように導かれ、間も無く旅立とうとしていた時のことです。その導きについては、21節22節に説明されています。

24節-25節 そこに、デメテリオという人物が出て来ます。彼は銀細工人で、他の職人と一緒に、アルテミス神殿の模型を作っていました。アルテミスの像も一緒になっていることもあったそうです。相当の収入が有ったというのは、巡礼者がその模型を土産にしたり、家に祭壇として飾ったり、神殿に奉納したりするために購入していたからでした。

26節-27節 デメテリオは、パウロが、人の手で作ったものは神ではないと説いたことを取り上げて、これではアルテミスの威光は地に落ちてしまうと、職人たちに訴えました。ここで、デメテリオは、全アジアが拝む大女神という表現をしています。これは誇張ではありません。地中海沿岸に、最低でも33か所に、人々がアルテミスを礼拝する地域が有ったと考えられています。
  デメテリオは、パウロの説明に納得していませんでした。彼にとっては、霊的な真理の探究よりは、お金の方が大事だったと考えられます
 
28節-32節 銀細工人の集まりで始まったこの動きは、町中に伝播したようです。アルテミスを崇拝する者たちが通りに集まって騒ぎ出しました。彼らはパウロを探したのだろうと思いますが、見つかりませんでした。代わりに、パウロの伝道団の仲間であるガイオとアリスタルコがつかまってしまいました。おそらく彼らは通りとか市場とか、人目につきやす所にいたのでしょう。人々は彼らを劇場に連れて行きました。
  劇場は、アルテミス神殿の隣にあり、あらゆる娯楽や集会のために用いられ、25,000人ぐらい収容できたと考えられています。また、罪人や奴隷を猛獣と戦わせる見世物にも使える施設でした。もしかすると、ガイオとアリスタルコを猛獣と戦わせようと考えている人たちもいたのかもしれません。
  パウロが劇場に入って行こうとしたのは、弁明をし、二人を助け出し、また、福音を説明する機会を得ようと考えたからでしょう。しかし、弟子たちだけでなく、アジア州の高官たちもパウロを止めました。この高官たちの仕事は、ローマ帝国と皇帝の礼拝を司ることであったと考えられます。そのような人たちが、パウロの友人であったことは、注目に値します。信仰には入らないまでも、パウロと交友関係になることをためらわないのは、パウロにそれだけの立ち振る舞いが有ったからだと考えられます。

33節‐34節 ここで、突然アレキサンデルというユダヤ人が登場します。どういう事情だったのでしょうか。実は、ローマでも反ユダヤ感情というものが有りました。クラウデオ帝は、ユダヤ人をローマから追い出す命令を出していました。(18:1-2参照)そこで、ユダヤ人はパウロの伝道するキリスト教とは関係無いことを説明して、少しでも立場を良くしようと考えたと思われます。しかし、ユダヤ人も天地創造の唯一神を信じ、偶像を退けていましたから、エペソの人たちには、キリスト教と変わりありませんでした。アレキサンデルは退けられ、エペソの市民は、2時間もアルテミスをたたえる声をあげ続けることになりました。

35節‐41節 ここでは、書記役が登場します。この人の仕事は、公文書の管理や保管でした。最後には、彼がこの群衆を解散させますので、もしかすると、パウロに対して好意的であったのかもしれませんが、彼の発言は、福音に反するものでした。
  最初に、彼は、エペソの人々がアルテミスの守護者だということは、皆が知っていることだと述べて、彼らのプライドを満足させました。次に、アルテミスの御神体は、天から下ったもので、人の手で作られたものではないので、パウロの説明を気にすることはないというものでした。更に、これらのことは事実であり、誰もそれを否定できないと言いました。続いて、彼は法律に則って行動するように呼びかけます。それ自体は良いことですが、彼は、そうすることによって、人々の目を霊的な問題から目をそらせてしまいました。また、騒擾罪になると、大変なことになると言って、市民の恐怖に訴えました。ローマは、そのような騒乱を大変厳しく罰していたからです。書記役は、エペソの町を守ろうとしたのであって、クリスチャンを守ろうとしていたわけではありませんでした。

まとめ)
  この記事を通して、聖書は私たちにどのようなことを示しているでしょうか。次の四つのことに目を留めたいと思います。

1)福音が早く広まったこと
  パウロの伝道の成果は目覚ましいものが有りました。2 テサロニケ3:1で、パウロが祈りの要請をしているように、私たちは、現在でも、福音が早く広がるように、祈らなければなりません。世界には、まだ福音が到達していない場所が有ります。パウロは、ツラノの講堂で2年間伝道しました。人々との接点を見つけたということです。私たちにも、そのような人々との接点が与えられて、より多くの人々に福音を聞いてもらえるように努力し、祈るのです。
2)福音に反対した人々の罪の性質
  デメテリオ‐彼は、霊的な真理よりも、お金を神としているような人でした。
  群衆‐霊的な真理よりも、自分達のプライドが大事な人たちでした。
  アレキサンデル‐クリスチャンの仲間だと思われたくない人(達)でした。
  書記役‐偶像に神と同等の地位を与える発言をして、神を貶めました。
      進化論やポリコレなどに、そのような態度を見ることができると思います。
3)パウロの肯定的な証と影響
  皇帝礼拝を司る立場にある州の高官さえ、パウロに好意を示していました。私たちも、周囲の人たちに、少なくともキリスト者として行為を持っていただけるような歩みを心掛けなければなりません。
4)パウロと同行者に対する神の守り
  パウロ達は、いつも神に信頼し、神の守りを祈り求めていました。神に拠り頼むことは、他の何に拠り頼むよりも良いのです。(詩編118:9-10 参照)神は、この時には、弟子たち、州の高官、書記役を用いて、パウロと同行者たちを守られ、誰も命を落とすことはありませんでした。