礼拝音声
聖書箇所:エレミヤ 40:7-41:3
説教題:何故ゲダリヤは殺されたのか
導入)
エレミヤはエルサレムの崩壊を預言しました。また、それを実際に目撃し、またゲダリヤの死の記録を残しました。6節では、エレミヤがミツパにいるゲダリヤの元に身を寄せたことが書かれていますから、彼が悪い人ではなかったことが判ります。エルサレムを陥落させたバビロンの将軍は、エレミヤがそのことを預言していたことを知っていたので、彼を寛大に扱って、バビロンの王がユダの総督に任命したゲダリヤの元に行くようにと言ったのです。
ゲダリヤについてもう少し説明を加えましょう。5節には、彼の父と祖父の名前が記されています。父親のアヒカムは、エレミヤの預言が高官の反感を買った時に、擁護してくれた人でした。また、祖父のシャファンは、宗教改革を進めたヨシア王の書記でした。ですから、ゲダリヤは敬虔な良家の出だったことが判ります。
本論)
バビロンの王はゲダリヤをユダの総督に任命して、捕囚に連れて行かれなかった貧しい人たちの世話をさせました。彼は、親バビロニア派として知られていたからです。このことを、バビロン軍を逃れて各地に身を隠していたユダの将軍たちが耳にして、ミツパにいる彼の元に集まって来ました。ミツパはバビロンに続く道の途中に有り、バビロンとの連絡に便利だったのです。集まって来た将軍たちにたいして、ゲダリヤは身の安全を保証しました。また、民と一緒に収穫をするように伝えました。ゲダリヤの元で、人々は安全と、高い収穫を楽しんでいました。
ゲダリヤの元に集まって来た将軍の中に、ヨハナンがいました。他の将軍たちと一緒に、アモン人の王バアリスに支援されたイシマエルが、ゲダリヤを殺す計画を立てていることを知らせました。彼らは、軍人だったので、諜報にも注意を払っていたのです。バアリスは、捕囚に連れて行かれたゼデキヤ王と反バビロン同盟を組んでいました。ですから、親バビロンのゲダリヤが総督になったことが気に入りませんでした。同盟を組んでいたゼデキヤ王の孫であったイシマエルにゲダリヤを暗殺させようとしたのです。イシマエルもゲダリヤの総督就任は気に入りませんでした。自分は王の血筋を引いているのに、ただの王の書記の孫であるゲダリヤがユダの総督に任命されたからです。嫉妬から、イシマエルもその計画にのったのでしょう。しかし、ゲダリヤはこの情報を信じませんでした。
ゲダリヤの立場は重要でした。彼の統治でユダはうまく行っていました。そのゲダリヤが暗殺されてしまえば、ユダの安定が損なわれるのは明らかです。ですから、ヨハナンはもう一度個人的にゲダリヤに進言し、自分がイシマエルを殺すと申し出ました。しかし、その時もゲダリヤはヨハナンの言葉を信じませんでした。そればかりか、「あなたこそ、イシマエルについて偽りを語っている。」という厳しい言葉をかけてしまいました。
しかし、ヨハナンの言葉が正しかったことが間もなく証明されました。年の7か月目には、仮庵の祭りや大いなる贖いの日などの大事な祭りが有りました。そういう時に、客を招くのは普通のことでした。イシマエルの訪問は、新しく就任した総督に、ダビデ家の代表として表敬するという名目で行われたと考えられます。ヨハナンの警告にも関わらず、ゲダリヤは無防備でした。イシマエルと同行した10人の将校によって、ゲダリヤは殺されてしまいました。総督の官邸にいた他のユダヤ人も、警護のバビロンの兵士も皆殺されてしまいました。11人で、そんなことができるのかと思われるかもしれませんが、官邸にいた兵士たちの人数が少なかったか、もしくは、11人がそれぞれ家来を連れていたかしたのだと考えられます。
まとめ)
ゲダリヤは、どうして自分の身の安全にそんなにも確信が有ったのでしょうか。幾つかの可能な理由が考えられます。彼をユダの総督に任命したバビロンの勢力を信頼していたから。ユダにまだ駐屯しているバビロンの兵士を頼りにしていたから。同僚としてゼデキヤ王に一緒に仕えたイシマエルとの絆を信じていたから。大事な主の祭りの最中に不敬虔な殺人が行われるとは思えないから。様々な理由が有ったと思われます。
この記事を書いた時のエレミヤの焦点は何だったのでしょうか。彼は歴史家ではなく、預言者としてこのことを書き記しました。その意図は39:15-18に出て来るエベデメレクに対する神の預言で判ります。この人は、クシュ人(エチオピア人)の宦官で、水の無い井戸に放り込まれて、死を待つばかりだったエレミヤを引き上げて助けた人でした。彼に対して神は、エルサレム崩壊の時にも彼の命は守られると言われました。その理由は、彼が主に信頼したからだ、というのです。この預言の言葉は、ゲダリヤの死の記録の直ぐ前に記録されています。ゲダリヤにはとても多くの有利な点が有りました。しかし、彼には一つ欠けていたことが有りました。彼は、主に信頼していなかったのです。このエピソード中、ゲダリヤは、一度も主への言及をしていません。ゲダリヤは何故殺されたのでしょうか。それは、彼が主に信頼していなかったからです。
このエピソードから確認するべき原則は明白だと思われます。
1)この世の権力や能力に信頼しないこと
当時、バビロンは最強の帝国でした。しかし、ゲダリヤは神に信頼するべきでした。彼は、イシマエルに殺されてしまいました。イシマエルは、アモンの王であるバアリスを頼りにしていましたが、ヨハナンの仇討ちにあって殺されました。ヨハナンと仲間は、バビロンの怒りに触れることを恐れて、エジプトに逃れました。それは、神に信頼する行為ではなかったので、彼らにも、神から裁きの預言がくだりました。(42:22参照)
2)主に信頼すること
エベデメレクはエチオピア人の宦官ですから、異邦人でした。しかし、主に対する信頼のゆえに、彼は、エルサレム陥落の時にも命が守られました。ゲダリヤは王宮でもっと高い地位を持っていましたが、ユダの総督に任命された三か月後に命を落としてしまいました。主を信頼することが、人生のカギなのです。イエス・キリストへの信頼が神の国における永遠の命に入れられるのです。主イエスにある命を選んでください。