「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」

長〜いタイトルのこの映画、「ラブはて」と略してくださいませ。90ffdfbcc4108311.jpg

(C)2018 SOULAGE

俳優として舞台の演出家として、脚本家としてそして監督として活躍する宅間孝行監督の最新作で、日本を代表する名優、三上博史さん14年ぶりの主演映画作品です。

三上博史さんといえば40代以上の方ですと「私をスキーに連れてって」をみてファンになりました!という方がおおいですよね。

そして、トレンディドラマの連投。

近年は、なかなか自分に納得する作品にめぐり逢えず、舞台の主演は数多くこなされていましたが

映画としては14年ぶり!映像で見る三上さんがお久しぶりという、往年のファンのみなさんにとってはお待ちかねだったのでは?!

本作は「刺激的な映画が観たい」という映画ファンにオススメな作品でもあります。

 

 

舞台はラブホテル、スタイルはワンシュツエーションの密室群像劇です。

まるで舞台劇を見ているような長回し撮影が生み出す、会話の応酬と役者達の演技力。ラブホテルに固定されたカメラが映し出すのは、まさに長いタイトル通りなのです。歌舞伎町のとあるラブホテルに刑事の間宮が入室し、靴を脱ぎ捨てカメラを設置する所から始まります。

そこにやってきた浮気相手の風俗嬢。いつものように情事を重ね密会していると、彼の妻で同じく警察官のしおりが部屋に踏み込んできます。

愛人を前にしての激しい夫婦げんかがはじまりますが、あやまって間宮が拳銃で女を射殺してしまう。その後の顛末がどんでん返しの繰り返しとともに描かれます。

このように冒頭のあらすじを紹介していますが、これがとんでもない展開になることだけは覚悟してみて欲しい。

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(C)2018 SOULAGE

え?そうなるの?え?どういうこと?まさかの展開に必死に頭を回転させながら見ることになり物語が終わったあとに、もう一度おさらいしたくなる。

105分の映像はワンカットにみえて実際は様々な映像テクニックを駆使して複数のカット構成がなされています。とはいえ40分のワンカットもあり、リハーサルを重ねて緊張感のあるワンカットを一度しかやりたくないと言ったのは三上博史さん。ハイテンションの芝居を舞台はともかく、映像では二度と同じことは出来ない。嘘になってしまうので一発オッケーで決めたとか。

 

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名阪の舞台挨拶で二日ご一緒しまして腰の低い方でとても気を遣ってくださる紳士でした。

お客様から、芸能界一めんどくさい俳優といわれている三上さんを起用した理由は?という質問がでたときは、

「いや〜そうなの?どこ情報?そんなことないですよぉ〜」と笑う三上さん。

フォローするように、監督も、「僕も芸能界では同じように思われています。こっち側の人間(笑)。それは絶対妥協したくない、真面目なんです。ものつくりに対する正義が勝ってしまい、みんな現場で何も言わなくなってしまっている。もの申すからめんどくさがられるんじゃない?」

三上さんは14年ぶりの主演作にこれを選んだ理由として「脚本がおもしろかったから。役者なら挑戦してみたいとおもった。僕が登場して、こいつは悪なのか善なのか、わからない。出た瞬間にこの人はいい役とかわかるような役は演じたくないですね。このクソ野郎な人間をわくわくしながら演じました」。

 

そうなんです!三上さんのおっしゃる通り、本作は冒頭から何がはじまるのか、見る側もわくわくさせてくれるそんな作品になっているのです。

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(C)2018 SOULAGE

ラブホテルにクセモノが次から次へとやってきて、全員が「弱みを握られ」「弱みを握っている」という状況で、それぞれの思惑と立場が交錯し、一瞬にしてパワーバランスが逆転するというシーソーゲーム。そもそもなぜ主人公の刑事はカメラを据え置きで回しているのか?見落とし厳禁、聞き逃し厳禁、そして疑問をいかかえながらラストの30分で全て回収していくという脅威のハイテンションサスペンス。

置いてきぼりになる人もいるかもしれない。

それはなぜ置いてきぼりになるのか?ということもインタビューで話してくれた。

「今は説明過多の映画が多く、なにか違和感があってもそれを作り手も見る側もスルーしてしまう。ところが違和感をもって見ていくとその紐が解けたときに快感が忘れられなくなる。」

監督は、「誰も見たことがない物が作りたかった、それは作る側にとっても見る側にとってもです」

 

「アリスクリードの失踪」という私の好きな映画があり、それになんとなく似ていると話したら、監督も実はそれは影響を受けているとか。「20代の頃にタランティーノの映画を観て、なんだこれ見たことがないぞ!とおもわせてくれたあの感覚は今でも残っていて、いつか僕も作ってみたいとおもった」

 

この映画は、ワンカットが基本になっていて、しかもカメラは据え置き。

三上さん曰くワンカット撮影というのは、5秒とか10秒が基本。長く撮ってそれをのちほどワンカットのように見せる編集テクというのもあるけれど今回は40分のワンカット長回しがあったんです!

 

そうとう大変な撮影だったにもかかわらず、嬉しそうに撮影を振り返る三上さん。

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「これほど役者を信用してくれる監督はいません。ヘタしたら役者が作品を台無しにしてしまうかも知れない。リハーサルをしながら流れを作っていくという作業がたのしかったですね、あらゆる角度から監督と考えて、こうしようああしようと。本番でリハ通りに行かなくてもそれはそれで良しとするとか。とにかくシビれる撮影でした」

 

監督は「普通の映像の考えは、素材を集めるという作業なんです。それを編集でどうしていくかがキモ。今回は芝居をやっている僕らは素材を撮られているということに重きを置きました。自分の役を解釈し、急に生まれる何かを撮ること。俳優達が駒のように演技をするのではなく、俳優達と向き合って行く撮影をしました」

 

「木村大作先生も言うように、カメラは置けばいいと。」

すると三上さんが「岩井俊二さんも言ってました!」

「ワンカットで一番長かったのが40分!これは別に見るときには意識しなくていいんですけど、長いと役者が飽きるので、カメラが動いて背中から撮ったり横から撮ったりしますが、今回はカメラは置いたままですから(笑)。役者の力にかかってますよね」

 

「そもそも映画は歴史が浅い、小さな劇団から始まって役者同士が集まって映像を撮りだしたのがきっかけ、つまり監督という職業がなかったんですよ。そもそも役者の演技をみなさんにみていただくわけです」と熱く、語る三上さん。

こんなに饒舌なかたとはおもってなかったです(笑)

 

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宅間さんは、自身で演出、脚本をかいてさらに主役もつとめる演技人。

 

そんな宅間さんについては「宅間さんは役者でもあるので、役者がいかにズルイか、ダメなのかというのもわかっていて、そしてその長所であり短所をどう使うのかも知っている。だから全面的にお互い信用し合って撮影ができたとおもいます。」

 

映画のキャンペーンの時にいつも思うのですが、監督と俳優がいかに撮影時に上手くいいっていたかというのがよくわかります。

仲がいいというだけじゃなくて、インタビューすると双方の考えが合致していたかどうかはわかってしまうのです。それはスクリーンにもでちゃいますしね。

 

長いタイトルの意味も、映画を見終わると納得し、それはなにか快感のようなモノを覚えました。

宅間さんはこれまでに

「くちづけ」「あいあい傘」など自分の舞台を映画化してきましたが、今回もぜひとも舞台化して欲しいなとお願いしておきました。

監督は「三上さんがでてくれるならね。あっギャラが高いか!」とつっこんでました!

 

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先週18日に公開「LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て」。

R15ですのでお子ちゃまとは一緒にみないでね。

名古屋はセンチュリーシネマにて上映中

https://love-hate-movie.jp/index2.html