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「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもと雨と雪」「バケモノの子」の細田守の最新作「未来のミライ」がいよいよ公開ですね。

完成までに3年かかったという渾身作。今回はどんな驚きを見せてくれるのか、観賞前からわくわく感がとまりませんでした。

今回の主人公は4歳のちょっと寂しがり屋の男の子くんちゃん。

4歳?子ども向け?と思いがちですが、子どもの目からみた大人の世界はとても新鮮かつ懐かしさを感じ、さらには家族の縦の繋がりを

未来やらやってきた自分の妹と時空を旅しながらめぐっていく。

くんちゃんを通して、自分過去と未来に思いを馳せ、おのずと自分自身ルーツや家族のありかたを見つめることになりました。

ちょっと不思議な体験だけど、どこにでもいるような街の片隅の家族の話は、私自身の話でもあったのです。

 

物語は、とある都会の片隅に暮らす、甘えん坊な4歳の男の子くんちゃん。ある日、くんちゃんの元に生まれたばかりの妹がやってきます。

両親は妹の未来ちゃんにつきっきりでくんちゃんは、愛情を奪われてしまう。初めての出来事に困惑してしまい、初めての嫉妬。どうしていいのかわからなくなってしまったくんちゃん。そんな戸惑うくんちゃんの元に未来から妹のミライちゃんがやってきて時を超えた過去の旅に出発します。そこで知ったのはおかあさん、おばあちゃん、おじいちゃんそしてひいおじいちゃんのこと。縦の家族の繋がりを知ることでくんちゃんはちょっとお兄ちゃんになっていくのです。

山下達郎さんのオープニング曲 「ミライのテーマ」〜がすごく良いの。

cute!cute!♪ついつい口ずさんでしまいます。

 

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(C)2018 スタジオ地図

 

先日、細田守監督と4歳の男の子くんちゃんの声を演じた上白石萌歌さんに単独インタビューさせていただきました。

 

萌歌さんより少し早めに取材室に入ってきた監督。

「お久しぶりですね〜〜おおかみこどもと雨と雪以来ですから、6年ぶりですか?」

「バケモノの子はこれなかったから・・そうですね。宮﨑あおいさんと御世話になりましたね」

などなど、久しぶりの再会を喜びました。

5分後に萌歌さんが入ってきて、「こんにちは、あ〜羊と鋼の森以来ですね〜、って!つい最近だ!」と笑顔で挨拶してくださった萌歌さん。

萌歌さんのやさしいお顔にぴったりの白地のワンピース。全体にちりばめられた花弁の刺繍柄がかわいくて、雑談から始まった

今回の単独インタビューは終始和やかでした。

 

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カンヌ国際映画祭 監督週間について

先日行われた第71回カンヌ国際映画祭開催期間中の「監督週間」にて「未来のミライ」が上映され、その感想からお聞きした。

監督週間は「監督の作風を重視」し、全世界1609本の候補から20本に絞られ、その中でアニメーション作品としては唯一選出という快挙を

成し遂げています。

細田:上映後に外国人のジャーナリストの方と話しました。日本の片隅のひとつの家族のお話ですが、まるで自分の家族の話のようだったと。

日本特有の「おひな様」のくだりがあり、これはどのように受け止められるかなと思ったんです。「ドールフェスティバル」と訳されていました(笑)。でも海外どこの国でも子どもの成長を願うというお祭りあり、そこは国や言葉や風習が違っても惹きつけられるところだと、海外の記者から感想を述べられたときは嬉しかったですね〜

ー萌歌さんのカンヌ経験はいかがでした?

萌歌:毎日が夢うつつで!自分はどこにいるんだろうと夢か現実か時々わからなくなりました(笑)

2回上映があって、一回目は記者のかたの上映でしたが、笑い声も聞こえてすごく楽しんでくださったようです。

ーくんちゃんの声を射止めてカンヌ行けてよかったですね!

萌歌:ほんとです〜。感謝しかないですね。

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ーでもほんとは、オーデションでは未来からきたミライちゃんの役だったんですよね?

萌歌:未来ちゃんの役で会場にはいって、ひととおり原稿を読み、終わった後に監督から「この原稿を読んで」といわれたのがくんちゃんの台詞でした。

ーどうして萌歌さんにその原稿を渡したんですか?

細田:ピンと来たんです。読んでくれますか?といって、初見じゃなんですから読み込む前に違う人のオーデションをいいれて、10分くらいかな、時間をおい読んでもらいました。そしたら「くんちゃんだ!」「くんちゃんを見つけた」と。

4歳の子の声はアニメの世界では野沢雅子さんとかベテランの女性が演じると思っていたので、こんな美少女の中に4歳児がいると思わなかったです。僕の想像をこえた瞬間でしたね。

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(C)2018 スタジオ地図

両親役の星野源さんと麻生久美子さんとの収録エピソード

ーそういえばくんちゃんが犬の声の真似してましたが、4歳児の役作りは?4歳児にたくさんお会いしたの?

萌歌:保育園にいって4歳児とふれあいました。すごくしっかりしていて自分の意思もありました。幼く作るのかと思っていましたが感情を剥き出しにすれば良いことに気がつきましたね。かれらの感情は0か100かなのが面白くて、心の動きに重視しました。

ーお父さん役に星野源さん、麻生久美子さん、ミライちゃんに黒木華さんと豪華な俳優陣でしたね

ー家族のところは同じブースにはいるんですけど、ほんとに家族みたいな雰囲気をお二人が作ってくださって。とてもよい現場でした。

 

細田:ブースの外のミキサーからみていて、役者の背中をみながら収録していくのですが、星野さん麻生さんというより、くんちゃんの両親になりきってましたね。

麻生さんは家族ぐるみのつきあいで、友だちが女優をやってるって感覚。一番先にキャスティングしました。星野さんは初めておあいしましたが作品にぴったりでした。結婚もしていないのにどうしてこんなにぴったり?!と驚きました。イクメンするお父さんの感情が声にでていて、いや〜すごいですね。

夫婦のカタチが初日からできあがっていて、本物の両親、夫婦ではないかと思ったくらいです。

 

4歳児からみた世界の見え方

ー5歳の甥っ子がいるんですが、子どもあるあるが楽しかったです。

細田:この映画を企画したとき、僕の子どもが0歳と3歳だったんです。その3歳の息子が映画の企画書みたいな夢をみまして。

未来ちゃんが大きくなった夢を見たと言うんです。これだ!とおもいましたよ(笑)

4歳児を主人公にするのは僕にとってもチャレンジでした。初めての体験を小さな子どもがしていく。自転車に乗るとか、妹ができるとかこどもにとってはすべてがはじめて。いろんなことに慣れてしまった大人に、子どもの目線からどう世の中を受け止めているのか、もう一度こどもの目に置き換えたら清々しいくらいに、世の中が違って見えるのではないかと思ったんです。

 

ーくんちゃんが自転車の補助輪がとれるようになったとき、自分が補助輪がとれたときの日をおもいだしました。すっかり忘れていたのに、自転車の後ろを父が押してくれた。

萌歌さんは今回、子どもの頃を思い出しました?

萌歌:くんちやんて、不思議な出来事がたくさんおきますよね。でもそれを素直にうけいれていく。私もなんでも信じる素直さがあったな〜と思いました。たとえば「おまじない」とかずっと唱えていたりとか(笑)、妄想癖もそうです。

 

実在する街を舞台にする理由

ー監督の作品は、実在する場所が必ず出てきます。国立美術館や上田市とか。今回、横浜を選んだ理由は?

細田:横浜の磯子周辺はかつて軍事工場があったんです。

くんちゃんのひいおじいちゃんも軍事工場につとめていました。ひいおじいちゃんのころは、国道の脇が海岸線でしたが、日本で初めての重工業地帯が出来て埋め立てをしたんです。日本で一番最初に高度成長のために変化した土地なんですよ。

社会が変化していくというのをリアルなまちで表現しようと思いました。家族のあり方やら世の中の常識が変化した姿を描くにはぴったりの場所でした。あと海や山もあって立体的な街ですから絵になります。

ー監督の作品は坂道がおおいですよね

ー映画をよく見てくださっている方の感想ですね。うれしいな〜

だからくんちゃんのちょっと変わった設計のお家も坂をつくってあります。坂道はアニメーションではとても絵になりますから。

ー100年の家族を描いてますが、萌歌さんは自分のルーツは感じました?

萌歌:ぜひ公開したら、祖父母を一緒に連れて行って18歳の頃はなにしてた?とか話したいです。そういうきっかけになる映画だと思います。

 

ー現代部分で両親が共働きをしていて、夫が建築設計士なので自宅で仕事がで来るという設定です。くんちゃんのお母さんはキャリアウーマンのようで、すぐに働きに出ていきます。イクメンをすることになった夫へ家事の手ほどきをする姿がリアルでしたね

萌歌:新しいですよね。いろんな課程のカタチがあると思いました、育児に家事に頑張るお父さんがすごく愛おしくなりました。この映画を観たらお父さんははげみになりますね。

ー監督は役割分担されてますの?

細田:ははっ(笑)。役割分担は話し合いながらあれはどうする、こーするとかしていくうちに

我が家流という自分の家族ができあがっていくんです。

不器用なお父さんが愛おしいと言われるのはうれしいなぁ〜

奥さんはいってくれないけど萌歌さんはいってくれた!

 

ー28歳の未来の萌歌さんにあいたい?

うわ〜そうですね。会いたいですね。すくなくとも立派な大人になっていたいな。家族の縦の繋がりを感じたいですね。

 

 

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この夜は、中京テレビ主催の「未来のミライ」舞台挨拶があり、お二人が登壇。

 

これから観るお客様に、作品への思いを語ってくださいました。

萌歌ちゃんがお話するとき、監督が娘を見守るようなやさしい視線が印象的でした。

 

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この作品を観てからというものの、“家族”“自分のルーツ”について考えるようになりました。

歳を重ねるごとに母の言葉に耳を傾けるようになり、なによりも自分のルーツがきになって

自ら母に質問攻めにしたこともありました。

先日も、お盆でも、記念日でもないですが、父のお墓に挨拶にいってきました。

家族や家族の未来のことを考えることも多くなり、くんちゃんとであってからは、甥っ子達とのせっしかたも少しかわりました。

そしてこの子達が夢の中でおおきくなって会いに来てくれたら、成長したらどんな子になるのだろうなど

楽しい妄想のきっかけをつくってくれた監督に感謝です。

 

 

 

未来のミライ 7月20日(金)より全国ロードショー

監督・脚本・原案: 細田守

作画監督:青山浩行 秦綾子 美術監督:大森崇 高松洋平 音楽:高木正勝 オープニング、エンディングテーマ:山下達郎

上白石萌歌 黒木華 星野源 麻生久美子 吉原光夫 宮崎美子 役所広司 福山雅治

企画・制作:スタジオ地図

配給:東宝 (C)2018 スタジオ地図 上映時間1時間38分