人より凹む回数が多いのではないかと思うくらい、わたしは凹み人生を送ってきた。と勝手に思っています。

もがいて殻に閉じこもりそうになった時に、いつも思い出す映画は「ライフイズビューティフル」

あとは「亀は意外と速く泳ぐ」とか「寅さん」とかジャンルはばらばら。

他にもたくさんあるけれど、自分の悩んでいることなんてちっぽけなこと、

少し視点をかえれば平凡な毎日も非凡になるのが「亀〜」、人生の中で辛いというワードがないと思わせる寅さん、

どんな苦境にさらされてもその時を楽しく生きよう、その瞬間を楽しもうとする「ライフイズビューティフル」。

もちろん、見る時期によってそれは感じ方が変わるけど、その時の自分の感情と映画の世界観が合致したとき

それまでの人生観もかえてしまうくらい映画には力があると思うのです。

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(C)WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

 

「走れ、絶望に追いつかれない速さで」などの新鋭・中川龍太郎が監督・脚本を手がけ、第39回モスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評連盟特別表彰を受賞したヒューマンドラマ「四月の永い夢」。

弱冠27歳の中川龍太郎監督は、「寅さん」に影響を受け、そして故・高畑勲監督の「かぐや姫の物語」で友人の死から少し立ち直ったのだという。

彼の長編映画4作目となる「四月の永い夢」は、恋人の突然の死から立ち直れず、何年も自分の殻にとじこもってしまっている元教師の“初海”が主人公。人生の一番美しい時期に、とにかく何事も起きないようにひっそりと生きている。そこに元教え子との出会い、アルバイト先の蕎麦屋の閉店、そして新しい恋の予感。すこしだけ顔をあげて人と交わることによって吹いてくる新しい風で、初海の固まった心が溶かされていく。

大切な人の死をめぐるストーリーながら、穏やかで心地よい感触の映画です。

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中川監督は、「声フェチ」だそう。この「四月の永い夢」を見た時に、なんて耳ざわりのよい声なんだろうと思いました。

本作品の主人公初海を演じた朝倉あきさんは故・高畑勲監督のアニメーション「かぐや姫の物語」のかぐや姫の声を担当されています。

監督は5年間に友人を亡くし、喪失感からなにもやる気が起きなかったそんな時に「かぐや姫の物語」をみて

死生観についての映画であったこの作品で友人の死を受け止めることが出来たという。自分のターニングポイントとなった「かぐや姫」に勝手にご縁を感じ本作の主人公は朝倉さんに決めていた。その想いがかなったわけですね。

朝倉さんは一度芸能界を休止してます。監督は、当時おそば屋さんを立て直す主人公の話を書いていて、その主演に朝倉さんを起用したかったので、休止した記事を見たときはかなりショックうけたそうです。しかし、再開した直後に彼女と会うことがあり今回の起用につながったとか。

声フェチといえば、本作に登場する俳優達は全員声が印象に残ります。

初海の恋人の両親は、母が高橋恵子さん、父は渋声の志賀廣太郎さん。元教え子の楓役の川崎ゆり子さんは舞台女優で、劇中で美しい声を披露しています。バイト先の蕎麦屋の娘役、高橋由美子さんの声も独特ですね。

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新しい恋の予感を感じさせる蕎麦屋の常連で、染め物工場で手ぬぐい職人の青年に三浦貴大さん。

彼と朝倉さんの会話はほんとに、目をつぶりながら(映画なのにね)ずっと聞いていたくなるほど心地よい。

声のハーモニーを大切にしたかったという監督。

初海に想いを寄せた青年が、高くて甲高い声だと浮き足立ってしまう。三浦さんのような太くて、こくのある声だと、積極的な行動も押しつけがましくなくなるんです!と声フェチならではの感想を嬉しそうに話すのです。

 

たしかに、「いつも見てました」「2年間好きでした」見ようによってはストーカーのように思える(笑)でもあの、渋くてこくのある声だとそうは思わないですよね?と監督に言われて、納得。

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今回の舞台は国立市。景観に対してすごく美意識の高い場所で、高層ビルはなく空がとても広々としている町。

「新東京百景」や「新・東京街路樹100景」に選ばれているメインストリートやJR国立駅付近で撮影されています。

初海が立ち寄る「帽子屋」さんは、あのハウルの動く城の帽子屋のモデルになったと言われているお店だとか。

帽子屋さんのシーンで流れるリズミカルな音楽がとても軽快で、耳に残ります。

音楽の使い方がとてもうまい監督でもありますね。

三浦さんはご実家が国立にあり、撮影は歩きで来ていたそうですよ。「経費が浮きましたね」と監督に言うと

「そうなんです!助かりました!」とうれしそうに話す表情は20代だった(笑)

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スタッフには愛知出身のカメラマン平野礼さんがいまして、

実はわたし、お父さんの知り合いですの。

たまたま後から知ったんですけどね。平野さんが集めてくれたスタッフが多かったので

この中川組は愛知勢が多く、神奈川出身の監督は肩身が狭かったとか。

 

余談ですが、監督の初恋は「寅さん」のさくらさん。

寅さんが大好きで、誕生日のプレゼントは寅さんのVHSを両親にお願いしていたそうです。わたしは、父と正月に必ず見にいっていたのが寅さんだったので、「リアルタイム」で見ていると自慢しておきました

ふふふ。

 

寅さんのどんなところが好きかと聞くと、「建物」だそうです。住んでいるところは人の環境を作るのでマドリ、生活する空間と仕事をする環境が地続きになっているので、だからこそあの人間関係が出来るとおもう。

声フェチであり、ボクは建物フェチでもあるんですと。

初恋の人、さくらさん=倍賞千恵子さんが自分の映画に出てもらうのが今の目標のひとつでもあるそうです。

すでに彼は倍賞さんに会いに行っているらしい!

朝倉あきさんを起用したい。彼女で映画を作りたいとおもって、この作品ができあがったので、きっとその夢も

近くにかなうのだと私は確信しています。

舞台挨拶ではGAGAの名物宣伝マン あの是枝監督がリスペクトしている面白人間 辻さんが司会でした。

司会進行はプロ並み。よくしゃべってノリがいい、相手を気持ちよくさせる天才です。(右)

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監督からのメッセージは、

この世界観は暗闇の中で、つまり映画館で見て主人公の感情を共有して欲しい。

自分の中で踏み出せないモノを持っている、どうやって生きていこうか悩んでいる若い人に見ていただきたい。

ボクの好きな昭和なレトロなものがたくさん出てくるので、年配の方にも楽しんでいただけると思います。

初海がテレビではなくラジオを聞いているという設定も好きだな。そのラジオが、また初海の人生の新たなスタートにもなるので

それは劇場で確認していただきたいです。

 

中川龍太郎監督。今後の作品がとても楽しみです。

若い才能と出会えて、よかった。

彼が是枝監督の歳でパルムドールを受賞するとしたら、あと30年ほど先。それまでは待てないので

あと10年、、15年以内にはパルムドールを受賞して欲しいです!まってますよ〜

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第39回モスクワ国際映画祭W受賞 第19回台北映画祭正式出品

「四月の永い夢」

6月2日公開 伏見ミリオン座

配給:ギャガ・プラス

(C)WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/