昔、勤務していた会社の話。

社長は、会社を一代で築き上げた凄腕。

3社を立ち上げ、そのうち1社は友人との共同出資で、その友人が経営。

そして、彼が兼務する2社は、もともとは1社であったものを分社化したもの。

よくある話だが、ある部署の業務が拡大したため、

その部署をそのまま切り分け、分社化。

そこの部長だった者が、肩書はそのままだが

ほぼ専務のような役割で分社を管理することとなり、

従業員もそのまま異動。

そのため、従業員は数えるほどの、とても小規模な会社だった。

 

私が勤務していた方は、その分社。

もともと本社にいた部長と、異動になった従業員たちは、

本社の人間は知っているが、

本社との関りは、ほぼなく、

本社と分社を渡り歩くのは、ほぼ社長のみ。

私は、分社化して何年か後に入社しているので、

本社の人間とは一度も会ったことがない。

 

本社の雰囲気は分からないが、

専務は、ずるいが賢くはない人間で、経費の浪費がハンパなく、

何度か監査が入って、その責任が俺にふりかかり厄介だ。

そのようなことを、社長が分社に来られると、よくぼやいておられた。

俺の後継に、あいつには絶対に任せられないと。

 

社長には息子いらっしゃった。

社長は、息子を甘やかせて育ててきた人ではなく、

息子さんの生活はむしろ質素で、金銭感覚はしっかりしておられた。

 

社長は、いずれは息子に自分の会社を任せたいと思っているようだった。

しかし、息子さんは、人がよすぎる方。

ずる賢い人に騙されてしまいそうなタイプ。

このままでは、本社の専務、分社の部長に負かされるのは目に見えている。

と、社長は考えておられたようだ。

 

そのため、社長は、息子さんに試練を与えた。

何もない、からっぽの会社を1社作り、

私が勤務していた分社の事務所の隣に事務所を作り、

ゼロから何かを作り出せ、と。

息子さんは、こつこつとやっておられた。

わざわざ分社の隣に事務所を置いたのも、

分社の部長と息子がお互いに見える場所に置き、

いいも悪いも影響を受けさせるためだったのだろう。

 

息子さんはとても気さくな方で、

奥様やお子さまの話をよく私にしてくださる、

家族に対する愛が深い方だった。

 

一方で、社長の息子さんに対して、

いつもバカにしたような陰口をたたくのが、私の上司であった部長。

儲けの出ない細かい仕事ばかりを子どものままごとみたいにやってるやつに、

会社の経営はできない。

俺はMBAを取得している。

私は、名刺にMBA取得などと書いている人など、それまで見たことがなかったのだが、

部長は、わざわざそれを名刺に入れ、自己陶酔しているナルシストだった。

 

のんきにやってるあいつが社長の後継になれるわけがない。

能力が足りない。

英語の一つもろくにしゃべれない。

そんなことを、いつも私にぼやいてたナルシスト。

 

私から言わせれば、この会社だって、あなたが基盤を作ったわけでも立ち上げたわけではなく、

あなたは任されたものやっているに過ぎない。

任されたものを膨らませるっていうのは、どこの会社の営業マンも当たり前のようにやっていることで、

それを、自分が築き上げた会社のように勘違いしているあなたの方が、よっぽどのんきで、よっぽどあわれ。

勘違いのうぬぼれ野郎。

私は、無言で彼の話を聞きながら、心の中ではそう思っていた。

 

息子さんは、本社の専務や、分社の部長に、自分がバカにされていることは知っていただろう。

しかし、こつこつと、自分のペースで確実にやっておられた。

 

社長もまた、息子さん同様にとても気さくで、

いつも笑顔で社員に話しかけてくださる方。

いつも明るく、おしゃれで、特に靴にはこだわる方だった。

 

いい靴を履くと、きっといいところに連れて行ってくれる。

だから、どんな時も、靴はいいものを履く。

 

そうおっしゃっていた。

 

ある日、私はいつも通りに出勤。

すると、

 

社長がいなくなった。

昨日の夜から行方不明で、連絡が取れない。

 

と、部長より告げられる。

話が見えなさ過ぎて、何を言っているのか、しばらく理解できなかった。

急にいなくなったと言われても、全く実感が持てない。

 

社長の電話番号に、何度もかけてみるも、

音は鳴るのに、受話器を取らない。

 

社長は前夜、部長を交えて取引先と会食に出かけている。

部長の話では、

「会食後は現地で解散。

その後は、自宅に帰られたと思っていた。

会食中、なんとなく、元気がなかった気がする。」

とのこと。

 

いなくなる理由がない。

会社の業績は極めて良好。

ニッチ産業を担う会社なので、

規模は小さいが、ないと困る商品を扱っていた。

取引も、上場する大手企業ばかり。

だから、そう簡単になくなることはない会社だった。

 

社長はプライベートでは、家を建てたばかり。

車も買ったばかりで、その時は日本にまだ3台しかない車だった。

私も一度、買った記念にと、一生に一度乗れるかどうかという高級車に乗せていただいた。

 

部長は、

「失踪する前に、奥様のために家を建て、孝行していかれた。」

そんなことを言って、社長はもう戻ってこないような言い方をしていた。

 

警察が一度事務所に来たが、特に何を聞くわけでもなく、

失踪した当日の、社長の足取りを部長に軽く聞き、

ものの5分ほどで帰っていった。

 

私は、その時、あることが頭によぎった。

社長が失踪する数カ月前に、部長が私にさらっと言った言葉。

「最近、学生時代の友達に会ったんだけどさ、そいつが今、〇〇組の若頭でさ、

いやー、びっくりしたよ。」

さらっと言われた言葉だったので、

一瞬、え?と戸惑ったが、

さらっと言われたことだったので、その時は、

「そうなのですか、それはまた珍しい交友関係で。」

と軽く返しただけだった。

 

しかし、思い返してみると、

もしかして?と私は思った。

その友達という人に、依頼をしたのか?

 

部長は、警察が来た時も、ものすごく堂々としていた。

自分の手は汚していないわけだから、堂々といられる理由は分かる。
彼はいつも堂々としている。

絶対に怖気づかない人。

 

直接聞いたわけではないが、彼は、部〇の生まれとのことで、

そのことに負い目のようなものを感じていたのか、

自分の生い立ちに関しては、一切語らない。

野心にあふれていて、いつも上から目線、

小難しい言葉ばかりを使い、自分以外はクソだ、と言わんばかりに、

いつもを他人を見下している。

「ちょい不良オヤジ」の発信源と言われている「LEON」という雑誌をいつも読み、

おしゃれにも気を遣う、ちょい不良ナルシストおやじ。

社会的立場における勝ち組を目指していた。

 

自分の生い立ちについては、一切語らないのだが、

自分の彼女についてはものすごく自慢をしていた。

私が勤務し始めたときにはバツイチだったのだが、結婚前提の彼女がいると言っていた。

彼女のお父様は、某テレビ局の元幹部だと、ものすごく自慢していた。

 

私は、部長から聞いたあの話を、

少しでも捜査の力になればと思い、息子さんに伝えようと思った。

直接は言うことができず、メールでそのことを伝えた。

息子さんは、それを警察に伝えられたのかは分からない。

 

また、私は私で、警察にそのことを相談した。

部長の交友関係を少し調べてほしいとお願いした。

 

しかし、私の分かったことは。

警察は、個人の都合では動いてくれないという事。

刑事ものドラマのように、人情味のあるアツい刑事はいない。

警察は、社会の都合、メディアの都合がないと動いてくれないという事。

あの、キャンプ場で失踪した少女は、

あんなに大掛かりで捜査されている。

それでもまだ、残念なことに見つからないのだが、

捜査する、しないというのは、

メディアでの報道され方の違いなのだろうか。

メディアで取り上げれば捜査し、

メディアが取り上げなかったら捜査しない。

それとも、子供だからだろうか。

この温度差は、一体何なんだろうか。

 

メディアは、誰の指示によって、事件をピックアップしているのだろうか、と思う。

警察自身の都合だろうか?

「警察24時」なんかは、たまたま犯人を捕まえた事件をいいとこ取りして、

かっこよく、偏った映し方をしているとは思っている。

 

もしかしたら、反社が絡んでるかもしれない事情には、

警察はかかわりたくない、かかわらないのかもしれない。

殺し屋は、自殺に見せかけて殺害してくれるので、警察にとって都合がいい。

自殺に見える他殺は、自殺として処理できるから。

もしかしたら、反社と、談合のような、かけ引きのような、そういうのがあるのか。

 

また、社長のように行方不明の場合は、

自殺とも他殺とも断定できないのだから、

自己都合で失踪した、と断定すれば、

警察は、わざわざ労力をかけてまで捜査する必要性を感じないのだろう。

しかも、反社が絡んでいるかもしれない失踪に関しては、

余計に触れたくないんだろうな。

まるで、聞かなかったことにしているように放置し、

警察は、全く探す気はないんだろうな、と私は感じた。

 

明らかに怪しいと思われる人物はいるのに、

その方は自分の手を汚しておらず、証拠がないので、

その方を逮捕するわけにはいかない。

あぁ、ものすごく悔しい。

 

結局、うちの社長は今も見つかっていない。

手がかりになりそうなものも、何も出てこない。

行方不明のまま、そのまま10年近く経過した。

反社によって始末されてしまったのか。

それも闇の中。

警察は、行方不明者を積極的に探すということはしない。

息子さんも、実感が沸かずにいらっしゃったのだろう。

落ち込むとかいうかんじではなく、理解しがたい日々を送っておられたと思う。

失踪直前に社長が建てた家、買った車など、

しばらくどうすることもできず、ローンだけを払い続け、

凍結された口座にもしばらく手を付けられず、大変困っておられた。

社長が、息子に迷惑になるということを考えずに、

前触れもなく失踪するとは思えない。

やはり、いなくなる理由がみつからない。

 

社長失踪後、息子さんは社長の会社の権利を放棄した。

息子さんは負けを認めてしまったのか、実は息子さんの方が賢かったのか。

本社は専務が、分社は部長が継ぐことになった。

 

その数年後、本社は破産したと聞いた。

分社は、メインの海外取引先が吸収合併されたと聞いた。

調べてみるが、HPなどはなく、

事務所は移転しており、実態のある会社なのかどうなのか。

ゴーストカンパニーのようだ。

そして、某テレビ局の元幹部を父親に持つ奥さんとは離婚されたという噂も。

 

息子さんは、0から始めた会社をコツコツと経営され、

生計を立てておられる。

そして、今もまだ年賀状でつながっている。

 

社長の失踪は謎のまま。

結局、これからもずっと、闇の中なのでしょう。

しかし、何をしても、どんな手を使っても、

結局は、満足な結果は得られないということ。

むしろ、もっと悪い結果になるということ。

本人たちは、人間は満足することはないということに、

やっと気づいただろうか。

 

私のような凡人の周りでさえ、

こんなことが起こってしまう。

私は自ら、身近でそういうことを経験し、

反社が絡んでいるような事件は身近で起こり得るのだと実感した。

ものすごく恐ろしい。

 

警察は、ほんとうに何もしてくれません。

警察は、本来の仕事をしていません。

警察の言う事は、絶対じゃない。

殺し屋により自殺に見せかけられた他殺はいっぱい起こっている。

警察によって自殺と断定されたもののほとんどは、自殺に見せかけた他殺です。

著名人、富裕層の自殺のほとんどが、自殺に見せかけた他殺でしょう。

 

↓まさしく私が言いたいことを、そっくりそのまま書いてくださっている。