献立を教えてと言われますが
栄養指導の仕事を始めてから、なんと、
もう30年が経とうとしています。
今では、疾病をお持ちの方、障害をお持ちの方、アスリート、ダイエット希望の方などいろいろな立場の方に指導させて頂けるようになりました。
いつもスポーツ栄養のセミナー終了後にアンケートを書いて頂きますが、
必ず具体的な献立を聞きたかったというご意見が1枚はあります。
私は、どんな場所でも、どんな方の指導でも、
献立の立て方の指導はしますが、
あえて私が献立を立てて提供することをしていないのです。
よく質問されるので、今日はそのことについて
書いてみたいた思います。
あるアスリートとの出会い
まだスポーツ栄養という分野が世の中に広まっていない頃(わたしは20代)のことです。
働いていたスポーツクラブにセレッソ大阪の選手(サッカー)が来ていて、
「食事や栄養の事を教えてください」とある選手から言われたことが私のスポーツ栄養指導の始まりでした。
それから、私は栄養指導という仕事で、
大切にしていることをずっと続けています。
セレッソの選手の要求はこうでした。
①栄養の基礎知識
②献立のたて方
③食べたもののチェック
一人暮らしだった彼は、見る見るうちに基礎を習得し、
完璧な献立をたてられるようになり、
料理を作ることすら楽しんでおられました。
そして、それは周りの仲の良い選手に広まり、
私も彼らにたくさんの事を学ばせて頂きました。
与えられるのではなく自ら学ぶ
その彼は決して「献立を立ててください」とは言いませんでした。
献立を立ててと言われれば、
20歳やそこらの私は、きっと何日分も立てていたでしょう。
求められることに応えることが仕事なのだと思っていたら、そうすることは当たり前になっていたと思います。
でも、彼はわたしにそれを要求しなかった。
それを頼めば自分には身につかない、
自分でできるようにはならない。
彼はそのことを知っていたからです。
学びというものは何かを彼は知っていたのですね。
指導者は先回りしてはいけない
彼は、現在は有名なジュニア世代の指導者となり、活躍されています。
わたしは、指導とは?を実践的に教えてもらっていたのです。
どんな分野でも、学びというのは、
自分発信、自分探究だからこその習得ではないでしょうか?
そこを指導者が先回りして、あれやこれやと「教えてしまう」ことで、自分発信、自分探究、自己選択と決定を奪ってはいけないと私は思っています。
それは子育てにも共通すると思っています。
答えを提供するのではなく、基礎知識を伝え、
応用ができるように道をつける、
そしてその方の自立と成長までが指導である
と、私は思っています。
特に、栄養指導は、
その人の年齢、性格、身体の組成、環境、食べ方の癖があるので、
一概にこれが良いと言うことができず、
そこを考慮して指導できないと結果がでない分野です。
だから、講座の際に安易に「献立」を見せて
これがいいよ、とは言えないのです。
必要なことはひとりひとり違うのですから。
自分のものにしていく学び、それを支える指導はどちらにしても時間と忍耐力が必要ですが、
栄養の知識は一度習得してしまうと一生の宝になります。
状況に応じて多少の違いはありますが、
基本は健康食だから。
そして、
アスリートをやめたから、病気が治ったから終わりの栄養指導は、私は違うと思っています。
そして、一度、栄養指導をさせて頂いた方は、
その方の一生のサポーターでありたいと思っています。