業務上負傷の後に発症したと認められる脳血管疾患および虚血性心疾患等であって, 次の①~③のすべての要件を満たすものは, 労働基準法施行規則別表第1の2第1号に該当する疾病として取り扱う。
①負傷による損傷または症状と発症した疾病との間に, 部位的または機能的な関連が, 医学上認められること
②負傷の性質および程度が疾病の発症原因となり得ることが, 医学上認められること
③負傷から症状の出現までの時間的経過が, 医学上妥当なものであること

脳血管疾患および虚血性心疾患等の認定については, 一般的に, 業務上の負傷が原因となって発症したことまたは業務上の諸種の要因によって発症したことが, それぞれ医学上認められることが必要である。 この認定基準においては, 現在の医学的知見に照らし, 業務上の負傷が原因となって発症または業務上の諸種の要因によって発症したか否かの判断基準として, 妥当と認められるものを認定要件とした。

「負傷による損傷または症状」 の損傷には, 切創, 挫創等の開放性損傷のほかに, 打撲による内部損傷等の非開放性損傷を含む。 また, 症状とは, 損傷が確認されない場合であっても, 激しい頭痛, 急激な血圧上昇等の症状が認められることをいう。 「部位的または機能的な関連」 の部位的な関連とは, 負傷部位が頭部, 頸部, 顔面である場合をいい, 機能的な関連とは, 神経系や血管系等の身体機能を介して発症する場合をいう。

疾病については、業務との間に相当因果関係が認められる場合(業務上疾病)に労災保険給付の対象となります。業務上疾病とは、労働者が事業主の支配下にある状態において発症した疾病のことを意味しているわけではなく、事業主の支配下にある状態において有害因子にばく露したことによって発症した疾病のことをいいます。例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、その発症原因に足り得る業務上の理由が認められない限り、業務と疾病との間には相当因果関係は成立しません。


① 労働の場に有害因子が存在していること

この場合の有害因子は、業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します。


② 健康障害を起こしうるほどの有害因子にばく露したこと
健康障害は、有害因子へのばく露によって起こりますが、当該健康障害を起こすのに足りるばく露があったかどうかが重要です。このようなばく露の程度は、基本的には、ばく露の濃度等とばく露期間によって決まりますがどのような形態でばく露を受けたかによっても左右されるので 、これを含めたばく露条件の把握が必要となります。


③ 発症の経過及び病態
業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触し、又はこれが侵入することによって起こるものなので、少なくともその有害因子へのばく露開始後に発症したのでなければならないことは当然です。しかし、業務上疾病の中には有害因子へのばく露後、短期間で発症するものもあれば相当長期間の潜伏期間を経て発症するものもあり、発症の時期はばく 露した有害因子の性質、ばく露条件等によって異なります。従って発症の時期は、有害因子へのばく露中又はその直後のみに限定されるものではなく有害因子の物質、ばく露条件等からみて医学的に妥当なものでなければ
なりません。

(1) 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
これは、所定労働時間内や残業時間内に事業場内において業務に従事している場合が該当します。この場合の災害は、被災労働者の業務としての行為や事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものと考えられるので特段の事情がない限り、業務災害と認められます。
なお、次の場合には業務災害と認められません。
① 労働者が就業中に私用(私的行為)を行い、又は業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それらが原因となって災害を被った場合
② 労働者が故意に災害を発生させた場合
③ 労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
④ 地震、台風など天災地変によって被災した場合(ただし、事業場の立地条件や作業条件・作業環境などにより、天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情がある時は業務災害と認められます。)


(2) 事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
これは、昼休みや就業時間前後に事業場施設内にいる場合が該当します。出社して事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の支配管理下にあると認められますが、休憩時間や終業前後は実際に業務をしているわけではないので行為そのものは私的行為です。この場合、私的な行為によって発生した災害は業務災害とは認められませんが、事業場の施設・設備や管理状況などがもとで発生した災害は業務災害となります。



(3) 事業主の支配にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
これは、出張や社用での外出など事業場施設外で業務に従事している場合が該当し、事業主の管理下を離れてはいるものの、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしているわけですから事業主の支配下にあり、仕事の場所はどこであっても、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的に業務に従事していることから、業務災害について特に否定すべき事情がない限り、一般的には業務災害とみとめられます。