1972年オリンピック夏の大会は、ドイツのミュンヘンで開催された。中盤も過ぎた頃、まさに9月5日未明に事件は発生した。
オリンピックを生中継する目的、独占的に放送を行うアメリカの放送局ABC。その通訳スタッフがふと、選手村の方角から聞こえた複数の銃声に気づいたところから始まる。現地のラジオ放送などを通じて、銃撃事件は徐々に報道されはじめ、ついにそれがテロリストによるイスラム選手団11人の人質事件だと分かる。現地に生放送の機材を持ち込み放送しているのはABCのみ。しかしそのスタッフはスポーツ専門のスタッフであり、本社からはニュース専門スタッフに任せるよう強い抗議が来が、彼らはこれを拒否し、自らカメラを配置して生放送を開始する。彼らの中でドイツ語が理解できるのは、女性通訳が一人だけ。飛び交う噂、ラジオや現地テレビの放送も、彼女抜きでは理解できない。そんな焦燥の中、瞬時の判断を求められるクルー達。
そこに写された映像を見たクルーの一人が、
「あれは、あそこに写っているのは、TVではないか?選手村の部屋でABCは観れるのか?」
彼らが放送する警察の動きもその他メディアの動きも、ライブ画像は、全て犯人達に共有されていた。
この事件はあまりに有名で、その顛末は世界中の人達が知っているだろう。
「血塗られたオリンピック」
これを報道側から、淡々と追いかけ、ドキュメンタリーのように描く。そのリアル感とスピード感は、派手な音楽や音響、映像もないのだが、緊迫感がすごい。
こういうの、日本人には作れないかも。すぐにお涙頂戴や、愛だのセックスだ、ギャグだのを入れ込んでしまうから。
でも、この映画は、後生のために残されるべき映画だと思う。