読書#01 司馬遼太郎が描かなかった幕末 一坂太郎 | なんのこっちゃホイ!

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 坂本龍馬は、司馬遼太郎が描いた小説「竜馬が行く」で、一躍幕末のスターとなり、多くの国民に慕われ、

尊敬されている。しかし、それは小説の中の話で、実は坂本龍馬が考案したとされる「船中八策」は

記録として存在もしないし、それが明治憲法の素案になったという記録もない。

つまり、作中の坂本龍馬はあくまで物語の主人公であり、実際の姿とはかなり違うと主張する。

大政奉還自体も、実は坂本龍馬は直接的には絡んでいない。その頃、史実(記録)によると、坂本龍馬は長崎にいて、

江戸にはいなかったとか。

 

 吉田松陰は、百姓、漁師の子供など、身分をはばからず松下村塾に入学させ、人材を育てたと「世に棲む日々」の

中で述べられているが、実は、そのような子どもたちは3人しかいず、その他100名近くの門人は、すべて武士の

子でもであった。作者によれば、吉田松陰はただのテロリストなのに、司馬遼太郎が持ち上げたばかりに、立派な

悲劇の大学者となってしまったという。

 

 作者もこの点は認めているが、司馬遼太郎は作家であって、歴史の研究者ではない。

故に、面白い小説を書こうと努力する人であり、その点において、司馬遼太郎は成功している。

作者没後にこんな方法で非難じみた言葉を投げる必要があるのだろうか。

むしろ筆者も含めて歴史学者と呼ばれる人たちの筆が、司馬遼太郎を追い抜けなかった。

あるいは、史実だけをつらつらと書き連ねてみても、何にも楽しくはないのである。

自らを恥じるべきは、歴史学者達ではなかったか。