中国SFドラマ:三体 (WOWOW on demand) | なんのこっちゃホイ!

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世の中の、これでいいのか、こんなことでいいのかを描くブログ。そんなにしょっちゅう怒っていられないので、ほどほどに色々な話題も混ぜていきましょう。

中国のSF作家劉慈欣が書いた小説を元に映像化。全世界で2,000万部を超える大ヒットで、オバマ大統領もファンで「続編を早く読みたい」とホワイトハウスから連絡して、発売前の続編を読んだという噂のある小説。読んだけど、本当に面白くて止まらなかった。

 

世界中の著名な基礎物理学者が、次々と自殺するという事件が相次ぐ。応用物理学教授の汪淼は、その中に見知った女性の名前を見つける。彼女の遺書に書かれていたのは、「物理学は存在しない」なぜこんな事件が相次いでいるのか調査を始めた汪淼は、自身の身体に不調を感じる。網膜の中で、数字が現れカウントダウンを続けている。これがゼロになった時に何が起こるのか。不安と混乱の中、公安(警察)の史強刑事と協力して、ある科学宗教団体にたどり着く。その名は「地球三体組織」といい、総統は葉文潔という女性科学者だ。葉文潔を調べていく内に、彼女の過去を知ることになる。

 

毛沢東による文化大革命のさなか、葉文潔の父親は、インテリだという理由で吊るされ殺されてしまうのを見る。心を失った彼女は、中国開拓計画による極寒の中での森林伐採工事に就かされる。その工事現場から見えるのは「レーダー峰」と地元から呼ばれている紅岸基地の巨大なアンテナだった。ジャーナリストからの裏切りに会い、その制裁を受ける彼女を救い出したのは、紅岸基地の技術者であった。彼の計らいで彼女は、紅岸基地での機器メンテの職に就く。そこで彼女が知ったのは、紅岸基地は仮想敵に対する防衛ではなく、宇宙に向けてメッセージを発信し、知的生命体を探すことだった。

 

一方現代。汪淼と史強は、運営者は不明なバーチャルリアリティーゲーム「三体」の存在を知る。それはどこともしれない惑星での、知的生命体の勃興と廃退の歴史であった。その惑星には、質量が同じような3つの恒星があり、それぞれの恒星の配置によって、その惑星は大きな影響を受ける。3つの恒星が遠ざかる時には、極寒の地となり、それが数十年から数百年続く。また3つの恒星の内の一つが近づいた時には、春のような麗らかな日々が、また数十年から数百年続く。3つの恒星が近づいた時には、地獄の炎によって地表は焼き尽くされる。そこに住む知的生命体は、3つの恒星の動きや位置と自分たちの惑星との関係を解明しようと、何十、何百もの文明を通して研究している。この恒星の動きは実際の物理学でも「三体問題」と称されて、現在でも研究が続いている。

そしてこの星の生命体も、宇宙に向けて耳をすましていた。

 

ある日、葉文潔は、太陽による増幅を利用して(太陽をアンテナにして)強力な周波数の電波を、上層部には秘密裏に発信する。その中身は、地球文明に関する情報。そして時は流れ、この日から8年後、彼女は知的意味合いを持つ電波を受信した。その電波を解読してみると、そこに現れたのは「返信するな、返信するな」という異星人からのメッセージだった。彼女が送信して、それを受けて返信したとすると、その星はわずか4~4.5光年しか離れていない至近距離(?)に存在することになる。彼女は、メッセージに背き、そのメッセージへの返信を送信してしまう。これで異星人に地球の座標はばれてしまう。それを承知でメッセージを送信した彼女は、地球人類に対する大いなる失望とその変革への望みを、異星人に託したのだ。

 

その星の知的生命体は、彼女の返信を受信する。三体問題に対する答えに行き着き、巨大な星間艦隊を用意して、いよいよ地球を目指す。

 

まぁ、良くある話と言えばそれまでだが、非常に難解な量子物理学の知識や応用物理学の知識が詰め込まれていて、実に真に迫る話にできあがっている。主人公の汪淼をはじめ、優秀な学者同士がこれらの知識をもって議論するのだが、そこでうまいのは、史強という学者ではない警官を配したことか。彼に学者が説明することで、難解な物理は大体理解できる。

 

三体の原作は、全部で三部作。ドラマはその内の1を映像化しただけだが、それは30話にのぼる。やや冗長な部分もあるが、次への興味で、どんどん進んでしまう。一気にみてしまう魅力がある。クライマックスは、小説そのままを実写にした、中国としてはとんでもなく迫力のある場面に出来上がっている。ぜひおすすめします。ただ、中国語なので、字幕がないとな〜〜んも分からんですよ。なので余計に、じ〜〜っと観てしまうのね。引き込まれます。