#23 怪物 | なんのこっちゃホイ!

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世の中の、これでいいのか、こんなことでいいのかを描くブログ。そんなにしょっちゅう怒っていられないので、ほどほどに色々な話題も混ぜていきましょう。

「怪物だ〜れだ」

非常によく練られた脚本だと関心した。さすが、カンヌ映画祭脚本賞を取った作品だけのことはある。冒頭の火事のシーン。駅前のガールズバーのあるビルが全焼、それを小学5年の息子とシングルマザーが、アイスキャンディーを食べながらベランダから見ている。この火事を対象点にして、それぞれの立場の人たちの行動や考えが映し出される。子供に暴力を振るったと学校に苦情を申し込んだシングルマザー、あれは怪物だ、モンスターだと笑う教職員。張本人の教師の側から見た時、理解不能な5年生の少年の行動。恋人の言葉。国会質問のように、紙に書かれた文章を繰り返し読み続ける校長。彼女の闇の真実は。それぞれの立場や見方、反応や行動、激しい怒り、静かな怒り、消えない炎。誰が本当の怪物か。怪物だ〜れだ?

怪物探しに夢中になり、忘れてはいけないことは、脚本賞と同時にクィア・パルム賞も受賞していること。この賞はLGBTQに対して与えられる。なぜこの映画が受賞したのか。頭に豚の脳が入っている、病気だと親からも軽蔑の言葉を投げかけられる子供。彼を守りたいが、周囲の空気がそれを許さない少年。二人だけでみつけた秘密基地。「僕は病気なんだ」と明るく言い放った子供。大人の怪物だけではなく、この二人の子供達も、見落としてはいけない大切な要素。一度鑑賞する価値あり。