【映画71】夢売るふたり | なんのこっちゃホイ!

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板前の貫也は、妻の里子と、小さいながらも居酒屋を経営し、お客の評判も上々で、毎晩満席の評判だった。所が、ある夜営業中の不注意から火事を出し、店を失ってしまう。

借金を抱え途方にくれる夫婦であったが、九州人の底力で、再び店を持つことを目標に動き出す。妻の里子はラーメン屋で懸命に働き始めるが、夫の貫也は、板前気質が邪魔をして、どの店でも長続きしないでいた。

ある女性が病院の救急処置室の前で、今にも死にそうな男性に会わせろと、婦長と揉み合っていた。処置室から出てきた男性は封筒に入った多額の現金を差し出し、「これは兄からです。生前にあなたに渡すように言われていました。あなたと兄のことは知っているが、家族は今さら、知る必要はないでしょう」
酒に酔った女性を駅のホームで解放したのは、貫也だった。女性を家まで連れて帰り話を聞き介抱する内に、その女性を抱いてしまう。翌朝、彼女は封筒を差し出し、「ママと店を復活するのに使って頂戴」と申し出た。家に帰った貫也に妻の里子が詰め寄るが、貫也は封筒を差し出し、本当のことを告げる。一旦は、その金を燃やそうとした里子だが、ある計画を思い付く。

東京という大都会には、輝きを失い、地に落ちた星のような女がたくさんいる。貫也には、それらの女性を慰め、夢を見させる力がある。そんな女たちに夢を売り、その対価を頂戴し、それを資本に店を再開させる。

夫婦は、里子がターゲットとなる女性客を選び、貫也が落としていく。女たちは、面白い様に貫也の誘惑に落ち、簡単に金を出した。二人は自分達の計画の成功に気を良くしながら、「これは借りているだけ。いつかは、倍にして返そう」と、自らの罪悪感を慰めてきた。

しかし、手段は徐々に目的へと変化し、なんのためにこんな詐欺をやっているのか、二人の間にわずかなすれ違いが。更に男女の感情も共通の目的がぼやける事で嫉妬に変化し、更に亀裂を深めていく。

二人の行く末に待つものは、あの頃の幸せに満ちた生活か、はたまた…

人は弱く、その心はもろい。そこにつけこんで、愛と夢を売った二人は、その代償として、何かを失い始めていた。それが、人生における収支というものなのかもしれない。

阿部サダヲは、ふくすけで舞台を見た。とてつもない存在感を持った役者だが、この映画でも、その存在感をいかんなく発揮。ともすれば、松たか子に持っていかれそうな映画だが、凄まじい存在感を見せている。

松たか子って、こんないい芝居するんだっけ?とふと思ってしまうほどの演技を見せている。妻として、女としての心の揺らぎや葛藤、苛立ちを見事に演じて見せている。「告白」からは、確実に一皮剥けていると思った。美しさは言うまでもない。

様々なタイプの女性達が、貫也に騙されるが、そんな中に、あなたはいませんか?探してみると、案外そこにいるかも知れませんよ!?




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