妻の誕生日プレゼントに買っておいた切符で、今日、二人で観に行った。
この原作はかなり昔に全部読んだ。
その頃は、航空会社と絡む仕事していたので、明らかにJALがモデルと思われるこの小説を、非常に興味深く読んだし、JALのスタッフとも、飲みながら話をしたものだ。まだ、あんなことがJALの社内にあるのか?との質問に、当時の営業担当者は「あります!何も変わっていないかもしれません!」と力強く答えたのが、記憶に残っている。
ストーリーはともかく、この映画、3時間半あり、途中で10分間の休憩が入る。しかし、本当にそんなに時間を費やさないと描けない話なんだろうか?確かに、原作は5巻あるスーパー長編である。だが、その多くは、主人公の恩地元(おんちはじめ)が、組合委員長として会社と対決し、その報復人事で海外を転々とさせられる。その赴任先での話が延々と書いてある。不毛地帯でも、シベリア抑留時代の話が延々と続き、ちょっとうんざりさせられるが、まぁ、しっかり書き込んであるといえば、いえる。それがあるから、御巣鷹山事故の後が引き立ってくるとも言える。
ところが映画では、この部分の描写があまりに薄いので、恩地の思いや、会社の冷酷さ、いい加減さが、今ひとつ引き立ってこない。渡辺謙の演技力で、どうにか悔しさや遣り切れなさが出てくるが、これなら20世紀少年みたいに、上下に分けたほうがよかったかも。
さらに狙いというか、テーマが定まっていない。JALの体質を描きたいのか、JAL役員の汚職とその背景か、あるいは、大惨事を引き起こしたJALとしての責任を追及し、体質故に、その遺族対応がいかにいい加減なものであったかを暴露したいのか。色々なことをいっぺんに描きすぎてて、何がいいたのか、よく分からない。消化不良を起こしている感がある。
くしくも週刊ダイアモンドで、JAL国有化の特集をやっていた。ANAとの比較は興味深い。2004年にJALは、沈み行く自社と、回復していくANAの違いを分析するチームを作って、そのレポートが提出されたという。その中身が若干触れられているが、興味深い。「ANAの社員は、儲からなければ会社が潰れるという危機感を持っている」とJALの社員がレポートしている。JALは「ナントカなる」という体質なんだそうだ。常識が違っている。JALの内部文書は非常に立派だが、実行されることがない。(これはわが社も耳が痛い)ANAは「社内文書は非常に簡易で、成果(Plan-Do-SeeのSee)に重点が置かれて評価されている」つまり、JALは役所仕事をしているということである。
年金問題も難題である。OBにしてみれば、それは現役時代に積み立てたお金を約束の利回りで返してもらっているわけだから、いきなり「半分ね」といわれて「そうですか」とは言えないだろう。だが、映画の中でも出てくるが、結構な料亭で飯を食ったり、結構なお店でお酒を飲んだり、全員がそんなことをしてないとは思うが、確かに昔の記憶では、JALの接待は派手だった。現役時代にしっかりいい思いをしてきたんだから、ちょっとは我慢してもらわないと。もし民間会社であったなら、こんな議論になりはしない。すんなり分割、清算会社と存続会社に分けて「ごめんね、会社潰れました。元本は返しますからね」でおしまいじゃないか。それだけOBにもまだ、危機感がないってことなんだろう。しかも、今日鳩山首相は、年金減額を前提に公的資金の投入を認める方向で結論を出したらしい。
いいのか!
こんなことでいいのか!
僕はいやだ!絶対に嫌だ!
JALなんかになんで俺の払った税金を入れるんだ!
タスクフォースが行ったデューデリジェントの結果、マイレージ引当金が5億円足りないらしい。全体は9500億円とか言ってる中だから、5億なんて大したことないと思うかもしれないが、でもこの5億円以外は、まったく国民には関係のないことなんだぞ。航空機の資産価値を膨らませて、キックバックを簿外で処理してたとしても、それは資産価値と利益を膨らませて「株主」をだましていたということではあっても、乗客をだましていたとは言えない。マイレージは違う。乗客の皆さんは、マイルを貯めて、無料航空券もらって、ささやかにハワイに行きたいと夢に見て、そうしてJALカードで支払いをし、せっせと会社の出張にJALを使い、コツコツと貯めたそのマイル。その準備金が5億円足りないと言っているんだぞ!
冬のボーナスは1.05ヶ月+2万円という妥結であったらしいが、これをゼロにするべく、組合と話し合う。幹部の12月給与はゼロにする。まぁ、当然だ。潰れそうな会社なんだから、賞与など出るはずがない。非常に強行な組合への対策が、なんと第2の組合を作り、この御用組合を使って内部分裂させるという、まったく恥じも外聞もないことをJALはやってきたと映画で描いている。だから8つもあったのか、5つなのか知らないが、事実そうして旧組合は骨抜きにされていく。しかし幹部が変われば、御用組合もいつまでも御用聞きでは終わらないんだろうなぁ。
しかし心配は、この減給による社員のモティベーション低下だ。全員の社員が「今日あるのは、私の責任、至らなさのせいだ」と深く反省しているかというと、この会社の体質は、きっと「過去の経営者が積み上げてきた不正であって、俺らには関係ない」と思っていることだろう。それでなくもて世間は非難轟々で、何故かCAもフライトのたびに客に詫びているらしい。これも、本当に悪いと思っているのだろうか。モティベーション下がれば当然仕事のやる気がなくなるんだから、ミスも出るだろう。飛んでる奴らは命がけだからまだましかもしれないが、地上職員はどうだろう。整備とか・・・・
怖いからJALには、これまでどおりに乗らないことにする。
まぁ、映画は長いだけで大したことはなかったが、JALという会社の内情は、なんとなく理解できた。
おっと!!
JALじゃないわ!
NAL(国民航空)という架空の航空会社だった!
偶然、同じ便名で同じ事故w起こしただけだった。
いやぁ~、申し訳ありません。