日本コカコーラ会長の魚谷雅彦氏の著書。
著者が、花王に入社し、現場営業を経験し、マーケティングに出会い、それからはマーケティング一筋の人生の中、ヘッドハンティングで日本コカコーラへ引き抜かれる。役員となった著者は、コカコーラの弱った缶コーヒー事業のてこ入れを手始めに、次々とマーケティングを成功させていく物語。
ちょっと我田引水な内容もあるが、素直に成功物語として読めば、学ぶべき点は多い。ジョージアは、売れてはいるのだが、「缶コーヒーと言えば?」という消費者調査では、BOSSに抜かれて2位になっていまう。シェアーも下降線をたどっている。消費者認知度が2位なのに、なぜ売れているのか。それはボトラーズ社が展開している全国500万台の自動販売機のおかげである。コーヒーが飲みたいなと消費者が思った時、そこに自動販売機があり、それはコカコーラーの自販機だというわけ。しかしこんな戦略のない販売では、必ず競合他社に負けてしまう。何とかして、「缶コーヒーが飲みたい」ではなく、「ジョージアを飲みたい」と消費者に思ってもらえること。つまり、マーケティングが必要だと。まだ売出し中の飯島直子を起用した、心の味をキーワードに大々的な宣伝広告を実施、あの音楽とともに、ジョージアは消費者の脳裏に、確実に植え付けられていく。
ジョージア第2の危機の時には、広告代理店を集めて入札を実施。後から追加で参加させた代理店のプレゼンは残念ながら、ぱっとしない。落選を伝えたら担当営業マンが、どうしてももう一回チャンスを欲しいと、必死で泣きついてくる。もうどうせ間に合わない。それでもいいのならと再度チャレンジの機会を与えたら、持ってきたのが、吉本お笑い芸人を使った、サラリーマンの日常にあるちょっとしたホッな時間。そこにジョージア!というコンセプトで、簡単なサンプル映像まで作ってきたという。全員がその内容に感嘆し、採用を決定。それがあの、コマーシャルだ。
外資系であるが故の苦労、アトランタ本社との軋轢。本社社長の交代による突然の方針転換等の苦労話もちりばめられている。
「常に、消費者のことを考えていることが大事」
「マーケティングとは、消費者とのコミュニケーション」
全くその通りである。
僕の仕事も本社勤めで、実際の販売は各国にある現地法人が行っている。本社業務はともすれば、「管理業務」に陥りがちだ。現実に、僕の毎日の仕事の90%は、現地法人の数値の管理と検証である。しかし本来、本社営業の使命とは、担当地域におけるマーケティングであるべきではないか。それだけをやっている訳にはいかないが、せめて仕事の20%~30%は、マーケティングであるべきで、その結果を開発部隊にフィードバックするべきなのだろう。僕たちには、お客が見えていない。現地法人にも、お客が見えていない。お客が見えていなければ、マーケティングなんか、できるわけがない。
「マーケティングや、宣伝広告を「費用」と捉えている会社は多い。しかし、これは重要な「戦略」であるのだから、僕は「投資」と考えることにしている。「投資」である限りは、「回収」されるべきで、広告効果を数値化するのは非常に難しいが、それをやり、効果を確かめるべきなのだ」
全くその通りである。
業績が悪化すれば、まず一番に削減されるのが、広告宣伝費である。次が交際費、旅費交通費。それ以外にコントローラブルな経理項目はないと言っても過言ではない。そして最大の固定費である「人件費」に手をつける時には、相当追い込まれている時だ。
しかし、彼の論理でいうと、これは全く逆のプロセスだと言える。事業を成長させるためには、投資が必要であり、投資の見返りとして、利益が生まれるのだから、いの一番に広告宣伝費等のマーケティング関連費用を極端に削減することは、事業の成長をあきらめることに等しい。まぁ、これはちょっと言い過ぎだろうけど、確かにそうである。ただし、マーケティングが的確・適性であるならという条件付きだけど。