東野圭吾原作の「秘密」の映画化。出演は、広末涼子、小林薫、岸本加世子。原作はかなり評判になった小説で、僕は東野圭吾のファンではあるが、なんとなくメロドラマチックなストーリー説明に、これまで触手が動かなかった。それが、「おくりびと」がアカデミー賞を受賞、それを記念してTVでこの映画を放送。それを観たのだが、こんなにいいお話だとは、思わなかった。
お話は、もう説明するまでもないかもしれないが、母親と娘がバスの事故に巻き込まれ、重体で病院に担ぎこまれる。夫は、翌日のニュースで事故を知り、病院へ駆けつける。瀕死の妻、意識のない娘。妻が苦しい息の中から娘の容態を聞く。ベッドをくっつけて、娘の手を握らせる。安心したかのように、妻はそのまま帰らぬ人となる。
それから娘は奇跡的な回復を見せる。ところが、娘は夫のことを「へいちゃん」と呼ぶ。それは妻が自分を呼ぶときの呼び方だった。それから娘が語る事実は、初めての妻とのデートの様子、どこへ行き、何を食べ、何で笑ったか。初めて彼が妻の部屋に泊まりに行った時の話。そして娘は驚くべきことを言う。「私は直子よ。あなたの妻よ。」どういうわけか、妻が娘の身体に宿ってしまったようなのだ。
娘は高校生。妻と話すように話す平介だが、顔も身体も高校生の娘、藻奈美である。妻は、この不思議な出来事を解明したいので、医学部を目指すという。平介も賛成し、猛勉強の末に、藻奈美(直子)は医学部に合格し、大学生となる。キャンパスへ通い、サークルに入部し、青春をエンジョイする藻奈美(直子)に、嫉妬を感じる平介。彼女を傷つけてしまう。「ねぇ、アレしようか」と直子が誘う。「あれって、ナンだよ?」 「エッチ」 しかし、顔も身体も実の娘である。もう少しというところまで行くのだが、やはり娘を犯すことは、平介にはできなかった。
そんなもどかしさ、もろさ、純粋さ。愛情と嫉妬。複雑な心情を、坦々と描いていく。そして、ついにラストを迎える。藻奈美は戻り、直子が消えた。そして、藻奈美の結婚式の当日。平介は驚くべきことに気付く。「お前、直子・・・なのか?」
広末涼子がうまい。岸本加世子の話し方や癖を実に上手に表現し、直子=藻奈美であることを演じている。下着姿も披露し、頑張っている。なるほど、アカデミー賞までの道のりには、こんな広末もいたのね。
とにかくお薦めです。機会があれば、是非このDVDを観てください。