妻が応募した試写会に当選して、映画を観に行ってきた。
映画は感染列島といいます。
ある日、養鶏業者の養鶏所で、多数のニワトリが一気に死んでしまう。鳥インフルエンザではないかと、マスコミが押しかける。まだ、調査中だという学者の言葉には耳も傾けず、マスコミは一気に鳥インフルエンザの発生を伝え始める。またそうとは確認されてもいないのに、養鶏業者の自宅には嫌がらせの電話がかかり、娘は学校でいじめにあう。ひたすらわび続ける親をみながら、娘は気丈にいじめに立ち向かう。
近隣の病院に、一組の夫婦がやってくる。夫が熱っぽいと訴える。この患者を診察したのが、このドラマの主人公、救急救命医の松岡(妻夫木聡)である。「ただの風邪だから、薬を飲んでゆっくり休んでください」そう診察した松岡の下に、その日の夜、救急で夫婦がかつぎこまれた。高熱、吐血、痙攣、多臓器不全。あきらかに感染症状である。その時、鳥の大量死のニュースが頭をよぎる。新型のインフルエンザか!その夜、夫は大量の血を吐き、目から血の涙を流しながら他界した。妻の見ている前で。妻の症状は、極めて軽い。夫の死を聞いた妻は、松岡に噛み付く「あなたが、ただの風邪だといったから、ゆっくり休めばよくなるといったから!人殺し!あんたは人殺し!」
その日を境に、同じような症状の救急患者がどんどん病院に運び込まれる。原因は分からない。まさに救急病院は戦場と化した。そこへ、WHOのメディカルオフィサー小林栄子(壇れい)が派遣されてきた。彼女は、これはウィルスによる感染であり、そのウィルスを特定できるまで、この病院を患者ともども隔離すると宣言した。
その間にも、人々への感染は爆発的な勢いで広がっている。感染者300万、死者120万人。遂には、感染は地域を越えて全国へ広がり始めた。恐怖のアウトブレークの始まりだ。このままでは、日本は崩壊してしまう。
そんな時、養鶏業者の父親が、全ての責任を背負うように、自殺してしまう。それを発見したのは、娘だった。まさにその直後、厚生省が「今回の感染は、鳥インフルエンザウィルスによるものではない。ウィルスは発見できなかった」と記者会見で発表した。そのニュースがあと、2時間早かったら、父親は死ななくてよかったかも。「人殺し!みんな人殺し!」娘の叫び声に、人々は胸を痛めた。
依然としてウィルスの正体は分からない。感染者の数は3000万を超え、死者は1200万人を超えたらしい。すでに政府も実体をつかめていないようだ。このまま感染は広がり続け、死者は増え続けるのか・・・・
パニック映画で成功と失敗は、センチメンタリズムをどれくらい旨く、リアリズムに組み込むかだと思う。例えば、Xファイルにおけるスカリー捜査官とモルダー捜査官のようなものだ。あくまで、論理と科学で迫るスカリーと、ウェットとも思えるほど、超常現象を信じるモルダーの組み合わせ。
この映画で残念なのは、壇れい演じる小林栄子の存在が、細すぎたことだ。彼女は、ウィルスと戦うことを職業とし、使命と感じている強靭な女性のはずだ。エボラと戦い、村を封鎖し、隔離のためには、容赦なく患者と家族を引き離す。そんな女性の姿は、クールでタフで、科学的で行動的でなくてはいけない。人が一人死んだとか死なないとかで、ビービー泣き叫ぶような、そんな女性であってはならない。あくまで冷静にチームを導き、クールに病と向き合い、闘う。そうでなくてはいけないが、彼女は線が細すぎる。最後には、院内感染、医師も感染、当然医師も人間だから死んでいく。その今際の寸前ですら、自らを検体として、血清治療を試す。どこまでもタフな女性が、最後に流す涙だからこそ、彼女の恋愛は美しく、人々は感動するのではないか。ビービー泣いてる女を観て女がなくのは、「もらい泣き」であって、真に感動の涙ではないはずだ。
残念!ハリウッドがリメークするらしいから、そちらに期待。
評価:★★★☆☆