26年前、若き駆け出し新聞記者が実際に体験し、取材した残虐な虐殺事件。山村の寂れた村で起こったこの事件は3人の被害者を出した。問題はその殺戮の方法だ。体中の骨は砕けて、頭蓋骨は破壊というよりむしろ圧迫による粉砕で、その圧迫痕はまるで人間の手形のような形をしていた。とても人間技でできるような事ではない。それは感情的な残虐さを言うのみならず、人間の能力や腕力では、こういう殺戮は行えない。しかもその後の調査で、体調は2mを超えており、体重は間違いなく200KGはあるということが判明した。犯人のイメージがつかめない。
その事件の前後に、米軍駐留基地から逃亡した男が逮捕されていた。そして、その逃亡事件の調査という名目で、米軍もこの村に出入りしていたことが分かる。米軍は何故、どうしてこの事件に関与しているのか。
警察が入手した資料や証拠の中に、犯人の毛髪と精液があった。しかし26年前の警察では、とても科学捜査などできようはずもなく、ましてDNA鑑定等不可能だった。しかし、現代であれば・・・・
警察に保管されているはずの証拠や写真、その他重要な資料は、全て失われていた。ある日を境に。そのある日とは・・・・
しかし実は、この新聞記者は独自に犯人の体毛を持っていた。彼は実際に犯人に襲われた経験を持つ。彼を助けたのは、村の共有物として、性具として弄ばれている、一人の若い、盲目の美女によってであった。その盲目の美女は「やめて。その人はいい人だから」という一言で、犯人を抑えた。しかも、薄れ行く意識の中で彼が最後にみたのは、その美女が犯人と交わる姿だった。
DNAの結果は驚くべきものだった。人間のものでもなく、チンパンジーでもなく、ゴリラでもない。どれにも分類されないDNAを犯人は持っていたことになる。一体犯人の正体は?
冒頭から最後まで一気に読み終わってしまうお話だ。テーマはよくある感じのUMA(未確認生物)を暴くというものだが、その犯罪の残虐性や、盲目美女の人生、そして若き新聞記者であった主人公が26年後に再び村を訪れて、当時の警察担当者や居酒屋のお上の娘等と人生を交えていく姿等のヒューマンな部分も描かれていて、残虐性の高い物語に一服を与えてくれている。
評価:★★★★☆