ツボ選びは娯楽として楽しんで
先日患者さんとの会話の中で、ツボについてのお話が出ました。
よく一般の方用のお灸などに付いている説明書には、ツボの効能書きが同封されています。
<せんねん灸添え付けの説明書>
では実際のところどうかと言うと、そんなにお手軽に効果効能が得られるわけではありません。
鍼灸師は臨床の場で様々な効果効能を考える前に、先ずはその病気の性質を把握した上で、それに対して最も治療をすべき対象の臓腑経絡を考えます。
その中で最も治療に相応しい経穴を選ぶのですが、それは単にその経穴の効果効能ではなく、様々な反応を観察した上で結果的に選ばれた経穴です。
ただ結果的に選ばれた経穴が、その病気に適した効果効能を持つとして有名であることはあります。
例えば「三陰交」という非常に有名な経穴があります。
この三陰交は婦人科症状に多く使用され、血の病を治すツボであると言われています。
その為、生理痛や生理不順、更年期障害、冷え症などの女性に多い疾患の治療によく使用されます。
ただ三陰交という経穴の効果効能を、鍼灸師のベストセラーである東洋学術出版社の臨床経穴学ではどのように紹介しているかというと、主治(治療効果があるもの)としてだけでも80種類以上の疾患や症状が挙げられています。
<東洋学術出版社 臨床経穴学 著:李世珍 訳兵頭明>
当然ながらそれ以外の経穴に関しても主治というものは複数存在しますので、同じ症状を主治とする経穴だけでも数十種類あります。
また複数の症状をお持ちの方であれば、更に適応する経穴は増えていきますので、主治を軸にして経穴を考えると無数に出て来てしまいます。
上で書いたように、プロである鍼灸師は主治は一先ず置いておいて、症状や東洋医学的診断から問題の有る臓腑経絡を探し当て、その経絡上から治療穴を選択します。
これは非常に複雑な作業で、一般の方には到底無理作業です。
ですから自分でお灸などをする時には、あくまでも娯楽の一環としてお楽しみ頂くか、鍼灸師の指導の下で適切なツボを選んで頂ければと思います。