久し振りにサボっていたYouTube動画を作成しました。
今回は網膜剥離の手術後の鍼灸治療についてのお話です。
今後は出来る限り多くの動画をアップするよていです。
またご要望等あれば教えて下さい。
普段は95%程度は眼科疾患の方を施術しているのですが、当然そうした方もそれ以外の病気や怪我をすることはあります。
先日ご来院されか患者さんは、筋肉ムキムキの体力自慢の方でした。
同じように力自慢の方と腕相撲をされたそうで、その瞬間に「バキッ!」という音と共に手の甲に激しい痛みが出たそうです。
そこで直ぐに病院でレントゲンを撮ったそうですが、骨折はないということで処置はなかったそうです。
その翌日に目の鍼灸治療で来院されたのですが、あまりにも痛そうですので少しご相談に乗りました。
とは言え鍼灸専門院である為、検査機器だけでなく治療用機器や固定具すら持ち合わせていませんでした。
ただ見た目から中手骨骨折は否定出来ましたし、捻挫すら怪しい感じでした。
その上で疑われるとすると、TFCC損傷と手根骨の不全骨折(骨挫傷)の2つです。
※TFCC: TFCCは「三角線維軟骨複合体(Triangular Fibrocartilage Complex)」の略で、手首の小指側にあり、橈骨と尺骨をつなぐ靭帯、軟骨、腱などの複合組織です。
この両者の厄介なところは、共にレントゲンには映らないということです。
その為、こうした手根骨付近の損傷に関しては、MRIでの検査が必要になります。
今回の患者さんも結果的に二つの整形外科を受診しましたが、その両方で正しい診断が付きませんでした。
その後私に言われた通りに整形外科で訴えたところ、ではMRIを撮ってみましょうとなった結果、月状骨の骨挫傷と診断されました。
月状骨の内部に出血が見られたそうです。
その後は安静や固定が必要なことには変わりありませんが、患者からすると軽症では無かったことが分かり納得したそうです。
今回は専門分野ではありませんでしたが、昔取った杵柄でお役に立てて良かったです。
これは多くの方が失敗するところですが、何かの病気に自分や知り合いが罹患した時に、病名で検索をかけて情報を収集します。
また私たちのような治療家側も、病名でHPの記事を作成する為にマッチングとしては悪くありません。
ただ問題としては、実は最も大事なことは病名ではなく、その原因や成り立ちにあるということです。
何故なら同じ病名でも、実際にはその原因や成り立ちが違うからです。
その場合、その病気に対する治療法や適応が違います。
そこで当院で良く起こる例についてお話します。
<例1>
2週間前から突然視野の欠損が出現し、眼科にて虚血性視神経症と診断された。
発病の1か月前から過度のストレスを感じる出来事があった。
それ以外の発病原因は特にない。
<例2>
2週間前から突然視野の欠損が出現し、眼科にて虚血性視神経症と診断された。
糖尿病や高血圧の既往症があり、動脈硬化を指摘されたことがある。
上の例では共に病名は虚血性視神経症ですが、例1ではストレスによる毛細血管の収縮にが原因で、微小循環障害が生じたと思われます。
その為、鍼灸治療の効果が非常に短期間で現れる傾向があります。
一方で例2では、基礎疾患として生活習慣病が見られます。
基礎疾患を考慮すると、動脈のアテローム硬化や血栓などにより虚血性視神経症が起こった可能性があります。
この場合、血栓の除去や動脈硬化に対する根本的な解決が必要になります。
鍼灸治療が効果を挙げることは間違いないのですが、生活様式の改善が必須になります。
また鍼灸治療の働きも少し小さいと思われます。
その為、鍼灸師は病名だけではなく、こうした病気の原因や成り立ちをしっかり把握することが大切です。
眼科疾患に限らず、病名だけで治療が出来るかどうかを判断すると、実際には不適応である方を長く通院させることになります。
治療院の中には通院させることが目的になっているところもありますが、不適応疾患の方を通院させることは、本来であればやってはいけない行為です。
仮に不適応疾患と思われる方を通院させる場合には、通院の目的や期間をはっきりと明示した上で通院して頂くことが大切です。
少し前からご来院されていた患者さんが、先日無事に完治されたということでLINEにてご報告をして頂きました。
そのLINEの中では眼科で、
「今回が初めてではなく、以前にも同じ状態になったことがあるようだと言われた。」
ということでした。
実はこのようなことは珍しいことではなく、黄斑部の浮腫というのは人知れず起こったり無くなったりを繰り返していることがあります。
また一度浮腫を起こしたタイミングで眼科を受診された方は、視界がぼやけたタイミングで受診すると浮腫を起こしており、それが無くなったタイミングで受診すると浮腫が引いているという経験をするようです。
その為、眼科医の中でも、黄斑部の浮腫は比較的自然治癒するものという認識の方も多く、古い年代の方ほどそうした傾向がありますので積極的治療を避ける傾向があります。
逆に若い年代の眼科医や専門領域の眼科医は、積極的に抗VEGF薬を使用されるようです。
比較的早い段階で来院される方の多くは、治療法がないから経過観察だと言われた患者さんで、そうした患者さんほど治りやすい傾向があります。
逆に積極的に抗VEGF薬で治療をされた方の中で、複数回治療を受けている人ほど治りにくい傾向があります。
こうしたことを思えば、少しでも見え方に変化がある方は眼科を受診し、早い段階で鍼灸治療を受けて頂くことが完治に繋がるのではないかと思います。
勿論、治りにくい方が複数回抗VEGF薬の治療を受けている可能性もあります。
ただ今回の方のように複数回浮腫を繰り返していた方でも、比較的短い治療期間で鍼灸単独でも浮腫が引いていることを考えれば、鍼灸単独でも良いのではないかと思います。
またその場合、治ってからの経過観察も重要で、VEGFが網膜に出来る仕組みを理解した上で鍼灸治療を受けて頂ければと思います。
大阪日本橋に移転・開業してから早7年目になり、徐々に当院の名前が検索上位に顔を出すようになると、問い合わせを頂く数も増えてきました。
週に数件は問い合わせを頂く為、月にすると10数件の問い合わせを頂くのですが、その内の何件かは鍼灸が不適応であると考えられる方からのものです。
こうした鍼灸が不適応であると思われるものには、絶対的な鍼灸不適応疾患であるものと、相対的な鍼灸不適応であるものがあります。
絶対的な鍼灸不適応というのは、器質的な疾患が原因で起こる症状でその治療対象が器質的変化であるものです。
例えば末期がんの患者さんが、その腫瘍を消失させたいといって来院希望される場合などがこれに当たります。
もう少しライトな感じであれば、70代の方が20代の肌に再生して欲しいと来院された場合などもこれに当たります。
相対的な不適応というのはかなり多くあって、これは例えば鍼灸以外によりベターな治療法がある場合や、適切な治療時期を過ぎてしまっている場合などです。
上の例で言うと、がん患者さんが来院された時に、外科手術であれば完治が期待出来るが、鍼灸治療であればそれが難しいと考えられる場合。
或いは年齢に全くそぐわない顔のしわの無さ(顔のハリ感)を実現したい場合には、美容外科手術が第一選択になるはずです。
ただこうした相対的な不適応の場合には、治療目的を変えることで適応疾患になることはあります。
例えば、モアベターな治療は存在するが、それを理解した上で患者さん自身の選択で鍼灸治療を選ぶ場合には治療対象になります。
こうしたことから、最初のお問い合わせを頂いた際に、自分の症状や希望をしっかりと書いて頂くと、無駄に初診に来て頂くことが無いため、『取り敢えず予約を取る』よりも、『取り敢えず相談してみる』ことをお勧めしています。