言われたことを丸呑みする必要はない
膝の痛みや息切れなどだけでなく、眼科疾患でもよく使われるのが、「年齢のせい」という言葉です。
患者の側からすると、これを医師に言われてしまうと言い返す言葉が無くなってしまい、最早回復を諦めるしかありません。
ただこの言葉を100%信じて良いのかと言うと、多少違ったこともあるのではないかと思います。
例えば『加齢黄斑変性症』という眼科疾患があります。
加齢と言うくらいですから、年齢が高くなるほどリスクが高いものとしているわけです。
この言葉からも、
『高齢者はある程度仕方ないよね…。』
といった感じを受けませんか?
そこでこの加齢黄斑変性症を例にして、年齢と共に発病するものは諦めるしかないのかということについて考えてみましょう。
タイプにより変わるが…
先ず加齢黄斑変性症には浸出型と萎縮型という2タイプがあります。
滲出型とは黄斑部に出来る新生血管からの出血や浮腫、そしてそこから派生する黄斑変性が起こります。
また萎縮型とは、黄斑部にドルーゼンと呼ばれる老廃物が溜まってしまい、それが黄斑変性に繋がります。
浸出型の場合には若年者にも起こり得ることですし、いわゆる特発性の脈絡膜新生血管などはこれに含まれます。
この場合、当院には10代での発病の方もいらっしゃいましたので、必ずしも年齢のせいとは言えません。
ただ萎縮型の場合にはドルーゼンが溜まる前提として、眼底部の循環障害や炎症などが長期間続いたことと、新陳代謝が低下していることも相まって起こる為、年齢が高くなると共に発病しやすくなることも間違いありません。
鍼灸治療の面からすると
では加齢黄斑変性の鍼灸治療という面からするとどうでしょうか?
先ず滲出型の鍼灸治療の場合には、年齢と共に治り難いのかと言うとそうではないようです。
抗VEGF薬の硝子体内注射を長期間続けている場合には、確かに効果が出難い面はありますが、これは若年者でも同じです。
次に萎縮型ですが、実は数年前までは萎縮型に対する鍼灸治療の効果を、しっかりと確認出来ていませんでした。
ところが昨年から施術をしている方で、かなり高い臨床効果を認めたため、萎縮型も例外ではないことを再確認しました。
<当院の症例 網膜ドルーゼン変視症に対する鍼灸症例 府外在住 70代男性>
こうしたことからしても、『年齢=治らない』というのは成り立たないでしょうし、諦めることはないということでしょう。
ただ総合的に言うと…
確かに『年齢なんか関係ない!』と簡単には言えません。
それはこれから視神経や網膜、視機能が発達する3歳の子どもと、一度視機能が伸び切った上で代謝も落ちてしまい、長期間に渡り循環障害や炎症などを繰り返した高齢者では、回復力が違うことは間違いありません。
ただその上でも、年齢だからと諦める必要はないと思います。
それよりも視機能の低下が視神経や網膜の変性なのか、ただの機能低下なのかの方が重要です。
残念ながら視神経や網膜が完全に変性・死滅した部分に関しては回復が難しく、それ以外のことに関しては年齢関係なく回復する可能性があるということです。