痛い失敗をしてしまった。




前髪の話である。



ひよこよさんはもう随分と長いこと前髪らしい前髪がない容姿をしていた。


若い時は肩までのボブでぱっつんに近い前髪であったのだが、
前髪があるとちょいちょい切らねばならないし、湿度があると癖っ毛でうねうねする。


年齢を重ねたこともあり、
さらには“また駐在があるやも”と辞令が現実味を帯びてきたあたりから伸ばし始め、
ここ数年間はずっと引っ詰めまとめ髪で過ごしてきた。



しかし夫はそんな髪型を“頑張っていない髪型”と言う。



長い方がケアは大変なのだ。


こんなにも硬水の国で乾燥からロングヘアを維持する大変さは半端ない。


そしてひよこよさんも短く切り、頻繁に気軽に美容院へ行けるものならもちろんそうしたい。


このロングの髪の長さは
“自分の家族や友人、好きな食べ物から遠く離れて駐在する覚悟と時の流れの長さ”
と比例している。



“頑張っていない髪型”と言われると悔しくなり、美容院の門扉を叩いた。


美容院の入口にある熊



そして“雰囲気を変えたいので前髪を作りたい”と一世一代のお願いをし、現在にいたるというわけである。




そして出来上がりが想像と違った。



もちろん美容師さんはひよこよさんの希望通りに切ってくださったのだから、正しいお仕事をしてくださった。




“前髪があると若返る”と話には聞いていたが、前髪があるからといって頬がリフトアップするわけではないのだ。



頬が落ち始めた40歳のひよこよさんが前髪をきっちり作ると、髪型ばかりが幼く見える。




『39歳に見えるで』


前髪を見た夫が言った。


先月の自分へ若返りは成功したらしい。




その後も前髪がある自分を鏡で見ては肩を落とす日々が続いている。



『絶対前髪がある方がええよ。

雰囲気も柔らかくなるし。』



夫が言うので、



『ちゃうねん。

年齢も年齢やし、私は可愛い系の新垣結衣より綺麗系の北川景子になりたいんよ。』


と返した。


すると、



『いや先ずな、

先ず自分はそもそもガッキーじゃないねん。

そして今までも北川景子ではなかった。』




確かに




前髪を切ったからといって自分は新垣結衣でもないし、目の前の夫も星野源ではない。



ただの中年夫婦である。



前髪はいつか伸びよう。



高校生みたいな前髪の悩みを抱えた40歳の始まりである。



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