ソファから降りて再度下半身が崩れ落ちたおまりーを抱え、前日お世話になった海賊経営の病院へとタクシーを走らせた。




時刻は18時45分。



おまりーが鳴き崩れてから20分で病院へ到着したという、我ながら素晴らしいトップスピードだったと思う。





『すいません、わしひよこよさんいう者で…

昨日Dr.ウォジチェホスキーに診察を受けたポメラニアンのおまりーを連れてきましてん。


昨日ほどではないのやけど、また下半身を痛がりましてな…

Dr.ウォジチェホスキーはいてはりますか。


と受付の海賊姉さんに聞いた。



待つように海賊姉さんに言われ、

しばらくすると診察室に入るように言われた。



診察室に入るとDr.ウォジチェホスキーではなく、『The ポーランド』という出立ちの男性医師が待っていた。





彼が着ているのは白Tシャツではない。


カルバンクラインの肌着一枚である。




カルバンクライン肌着は来院の経緯を尋ねてきた。

説明すると、おまりーの下半身を触診したのち


『レントゲンを撮りにいこか』


と再度レントゲンを撮ることになった。





『入ってや。

おまりーだけやなくてひよこよもやで。』


と一緒にレントゲン室に入ると、

カルバンクライン肌着は別室へ行った。



レントゲン室の壁の謎の生物タイルが、ひよこよさんの頭の上にある不安レーダーを奮い起こす。





この犬と分かるタイルでさえも、

さらにレーダーをぶん回しにかかる。






カルバンクライン肌着が戻ってくると、開口一番



『よし、ひよこよ。

レントゲンを一緒に撮るで。

そこにある防護服を着てくれや。』






レントゲン技師の助手




『防護手袋が見当たらないんやけど仕方ない、そのままでいこう。


防護服を着たらおまりーをひっくり返して、

いけるところまで足を伸ばしてくれや。

僕はレントゲンのスイッチを押すで。』






出来るかい!





おまりーを必死にひっくり返そうとしたが、

もがいてしまいって足を伸ばすどころではない。


股関節を痛そうにしてる愛犬の足をいけるところまで伸ばすなんてことも出来ない。



そもそも別室で談笑してた他の海賊員たちは何しとるんや。




カルバンクライン肌着は考え込んだ。



『… 整形外科医のDr.ウォジチェホスキーは今日はおらんのや。

スムーズにレントゲンを撮るには麻酔を打つしかないが、昨日も打ったしそれは危険やから避けたい。


となると、整形外科医のいる他の病院を紹介するから行ってみてや。』




また他の病院である。



今はもう20時近い。


家に置いてきた子どもたちのこともあるし、

今から他の病院はひよこよさんとて正直辛い。

かといって早くおまりーの痛みの原因も知りたい。




ひよこよさんは最終決断をした。





『カルバンクライン肌着よ、

私にもう一度おまりーを押さえさせてや。』





ひよこよさんは自らもう一度ずっしりと重い防護服を着た。



そしてひっくり返したおまりーの胸元を左手で握りながらぐっと押さえこみ、

右手の手のひらを返して弓のように両足を伸ばした。



ひよこよさんの並々ならない気迫を感じ取ったのか、おまりーは抵抗しなかった。




『ええで!

ええでひよこよ!

そのままや!』



カルバンクライン肌着は急いで部屋を出てレントゲンを撮った。



ひよこよさんは脇汗びっしょりだった。

カルバンクラインの肌着を着替えとしていただきたいほどである。




レントゲンを見たカルバンクライン肌着は



『骨はちゃんとはまっとるな。

経過良好やと思う。

今日は痛み止めだけ打って、水曜日に整形外科の予約を入れたるわ。


あと明日1日分の錠剤も処方するわ。

赤い錠剤は半分に割って朝晩、白いのは明日の晩だけ飲ませてな。』





何の錠剤か説明がなかったので後で調べてみたところ、股関節の疼痛緩和の薬とのことだった。



とにかくひよこよさんは脇汗が水道状態であったが、おまりーの経過が良好であることだけが分かったことが何よりである。



レントゲン技師の助手という新たな経験値を獲得し、またひとつ豆鉄砲レベルを上げたひよこよさんであった。




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