止まった時計塔が存在する鳴鐘町。

直そうとしても、何かの理由で時を刻むことはない。


そんな時計塔の下で出会った

【死神】と【少女】の物語。



真相を知るまではどれが嘘でどれが本当なのか、誰と誰が何なのかまったくわからないまま進んでいく。

全ルートを終え、あとがきまで読んでやっと理解が出来る。読み応えしかない。

どこに真実が落ちているかわからない手前、驚きの連続であるし、どこを読んでいっても新しい情報が落ちてくる。






⚠ネタバレ注意⚠






★日生光

元生徒会長の優しい王子様。みんなに好かれてどこまでも完璧で紗夜のことが大好きな先輩。日生家から抜け出したことがあるけれど、日生の家こそがいるべき場所だと気づいて家へ戻ることを選んだ。というのが、個別ルート前半戦。紗夜のこともよく知っていて家を捨てたいという悩みを親身に考えてくれるし、逃げ出すことも考えてくれる。が、この日生光が偽物というのが今回のキー。家を抜け出した日生光は実際2年間家から離れている。その隙に偽物の日生光が日生家に入り込み生活。紗夜に対してある物語を語り始めた時にどっちが本物でどっちが偽物だ?という感覚はあるものの、どうか今いる日生光こそが本物であれ。と、思ってしまう状態。完全にヒロインとのリンクだった...そうなると本編ENDの通り、嘘つき同士ウソをつき続ければ真実になる。が本当にありがたい。

明かされる衝撃の【顔が似ているだけの犯罪者

それでも紗夜が“知っていて、一緒に過ごした日生光は偽物の方だ。”というこの複雑さがたまらない。



★桐島七葵

光先輩と逃げないことで1つ章が増えて5章編成。主に千代の正体についての物語。結末から言ってしまえば、コスモス(秋桜)が人間の形を取ったものが千代。つまり彼も幻想。七葵先輩が名付けた【千代】という名前に関しては、“千代に八千代に”という意味で永遠を意味する。七葵先輩は千代の正体を自覚することで彼が見えなくなってしまうわけだけど、本当は千代と“ ずっと一緒にいたかった”という事実が、名付けた理由を明かしたことで判明する。千代が桜にこだわるのも【秋桜】から来ていて、春の桜に会うことを望んだからこそ。花言葉が【コスモス:「調和」「謙虚」】、【桜:「私を忘れないで」】なのがどっちをとっても千代だなぁと思う。現時点だと紗夜は千代しか見えない。七葵先輩個人ルートは彼の人柄含めて割とあっさりなものの、死神組の謎解明には彼の能力が必要不可欠。【死神と少女】全てを通して、彼のみが客観的に物語を見ることが可能

視えるが故に惑わせ、視えるが故に全てを知ることが出来る。そしてあとがきで判明する、実は桐島家の人間では無い驚愕。過去の記憶もない。



★遠野十夜

何かしらの問題の原因だと睨んでいた十夜兄さん。ここでは黒の章へ分岐。見えないものが見える組の前には姿を現していたこと然り、紗夜のことが好きすぎること然り。完全に黒幕にミスリードされた。日生先輩の放った「嘘つきはすぐ傍にいる」が紗夜を指すとは思わず...十夜は死神と少女に魅入られた孤独な少女(紗夜)が寂しさを紛らわすために生んだ救い。つまり 十夜が幻想であり死神である という事実に繋がる。鳴鐘町にある時計塔の時計が止まっているのは、紗夜の時が止まっているからであり、動かすには紗夜の旅(=美しい言葉を見つけること)が終わる必要がある。黒の章は小説“死神と少女”になぞらえて、トータル10個の幻想が作り出される。十夜は幻想から逃げ出した時のペナルティを課していない為、事実から逃げることも可能条件は他の誰かを想い、十夜を忘れること紗夜自身は実在する誰かを傍に置くことで病を看破することが可能であるものの(そもそも死に直面するほどの病では無い)、その際幻想の十夜は存在することが不可能になる



★蒼

最後に回した蒼こそ【死神と少女】そのものの謎を解くための物語。諸々の問題は共通章とここで解決。十夜が幻想であると判明した時点で何故、死神の“蒼”は見えるのか。という点について疑問を抱くわけだけれど、実在する人間というのが正解。彼がそもそも1人で孤独だったことがきっかけに始まったお話で、彼に死神になろうと決意させたのが小説の存在。蒼が【死神と少女】に憧れを抱くところから全ては始まる。魔法使い(臥待)から「死神は唯一の存在」と聞かされ、蒼は死神を探す旅に出ることを決意。後に明かされる死神は十夜と蒼2人いること。死神を殺すことで死神になれるのではなく、幻想として在る十夜の代わりを実在する蒼が務めることで紗夜を救おうとする臥待さんの策という事実。出会った時の記憶喪失の状態を作ったのは十夜。先述した臥待さんの考えを知らない蒼は死神を殺す為に、幻想を作るもとである紗夜を殺そうとする。紗夜を守ることを役目とする十夜が記憶を消すに至る。死神になることを目指した先で、紗夜と再会することをきっかけに【何も無い】と思っていた青年が、少女だけは【いる】という事実を自覚。人間として周りに認められていく。言葉が少なく感情が乏しいものの接してみれば優しくて、約束は必ず守る誠実な人。