あなたもすでにご存じだと思いますが、HIVに感染した40代の男性が献血を行い、その血液が輸血用に使われた結果60代の男性がHIVに感染しました。
40代の男性は献血前の問診で事実と異なる申請を行っており、最初からHIV検査目的で献血を受けたのではないかと見られています。
そして、このニュース報道の中で、テレビ、新聞、ネットメディア、その全てがこう指摘しています。
『献血でHIV感染が分かっても献血者には教えない。だから献血はHIV検査代わりにならない。』
日赤血液センターがHIV感染を教えないのは献血がHIV検査代わりに使われることを防ぐためです。もしも教えるとなれば、多くのHIV感染の不安を抱える人が献血を利用するでしょう。
何しろ献血は保健所と違って原則年中無休です。12月31日と1月1日以外は献血をやっています。ある意味保健所より利便性が高いのです。
そして、血液センターで行っているHIV抗体検査、NAT検査(核酸増幅検査)ではHIV感染初期の感染者を見つけることは困難です。
今回の40代男性の場合も献血の2週間前に男性同士の性的接触を持っており、HIV感染初期だったため検査で分からなかったとされています。
それゆえ、何としても献血をHIV検査代わりに使われるのを防ぐため、「HIV陽性でも教えない」としているのです。
しかし・・・・
あえて書かせて頂きますが、実際には献血者に対してHIV陽性の告知を行っています。日赤がどんなに建前を言っても、事実として告知を行っています。
なぜ私がそう言い切れるか?それは3つの根拠があるからです。
1.国立感染症研究所のホームページに以下の文章が掲載されている。
『現在、日本赤十字社では、HIV陽性献血者に対しHBV、HCVの ような陽性者への通知は 行っていないが、感染拡大の防止、感染者の早期治療を促すために必要な措置を講じている。』
ここでいう必要な措置とは何を指しているか? 言う間でもなく本人への告知です。何しろ国立感染症研究所のホームページですから記事の信ぴょう性は極めて高いです。
2.私自身が有料で入手した、あるエイズ関連NPOの資料には、献血でHIV陽性の告知を受けた複数の手記が掲載されていた。
こちらもかなり信頼できる資料です。長年実績のあるNPOであり、資料の内容はとてもリアルなものでした。
3.たまたま受けた献血でHIV陽性を告知された本人がブログを運営しており、情報発信している。
このブログはすでに6年間も運営されており、信用できる。
以上のように、献血でのHIV陽性が献血者に告知されることは印刷物やネットの記事によって、すでに知られているのです。
ただ、日赤が建前として断固教えないとしているため、多くの人はこの事実を知りません。
また、事実を知っていてもそれを公にはしてきませんでした。なぜなら献血がHIV検査代わりに使われることを助長させてしまうからです。
しかし、今回発生したHIV感染の再発防止を考えるとき、今のままで本当にいいのでしょうか。
「検査結果は教えない」
とするなら本当に教えない。
教えるのなら、献血がHIV検査代わりに使われることを前提にした感染防止対策を考える。
これが必要なのではないでしょうか。私はそう思います。
なお、私は献血でHIV陽性を告知するとは書きましたが、それは献血がHIV検査の代わりになるということではありません。
なぜなら、
●確かに献血でHIV陽性を告知された人がいることは歴然たる事実だが、果たして陽性者全員に確実に告知されているのかどうか、分からない。
●告知する業務は血液センターの本来の業務ではないため、保健所や病院が行う告知のようなフォロー体制は期待出来ない。
「献血を検査代わりに使っただろう」
と責められたケースもあります。今回の40代男性もすでに相当なバッシングにあっています。こんなことなら保健所に行けばよかったと後悔しているかも知れません。
このように、告知を受けたとしても保健所でのHIV検査のようにはいかないのです。
今回のHIV感染に関して、私が最も納得がいく指摘を行っているのは岩室紳也氏です。よかったら、あなたも岩室氏の指摘を読んでみてください。
最後にあなたへのお願いです。
告知がどうであれ、献血をHIV検査代わりに使うことは絶対にやめてください。それはあなた自身にとっても大きなマイナスとなるリスクがあります。
HIV検査は陽性ならあなたの命にかかわる重大な検査です。保健所や病院で絶対確実な方法を選んでください。
万一HIV陽性だったとき、万全の体制でフォローしてもらえる検査を選んでください。
全国の保健所では無料・匿名でHIV検査を行っています。