吉増剛造の詩「燃える」は、1970年に刊行された代表的詩集『黄金詩篇』などに収められている、若き日の熱情と強烈なイメージに満ちた現代詩です。太陽や恒星、アジアといったスケールの大きな空間と、身体的な衝動がリズミカルに結びつく名作として知られている。

 

 ボクがこの詩を知ったきっかけは、1973年頃に買った小室等のLPレコード(アナログ)『私は月にはいかないだろう』だったと思う。

 このアルバムのなかに「今夜、きみ」(詞=詩;吉増剛造)というのがあって、調べると、『黄金詩篇』の「燃える」という詩からとったものだということを知った。

 

 

   「燃える」    吉増 剛造
 

黄金の太刀が太陽を直視する
ああ
恒星面を通過する梨の花!

風吹く
アジアの一地帯
魂は車輪となって、雲の上を走っている

ぼくの意志
それは盲ることだ
太陽とリンゴになることだ
似ることじゃない
乳房に、太陽に、リンゴに、紙に、ペンに、インクに、夢に! なることだ
すごい韻律になればいいのさ

今夜、きみ
スポーツカーに乗って
流星を正面から
顔に刺青できるか、きみは!

 

 

 この「燃える」という詩篇の特徴は、「黄金の太刀が太陽を直視する」といった、眩しく激しい視覚的描写。 恒星面やアジア、車輪、雲の上といったダイナミックな移動のイメージ。 

 魂が車輪となって疾走するかのような、躍動感あふれる言葉の連なり。

 奔放にみえる言葉のもつエネルギーとその疾走感は、当時のハードロックといった印象だった。

 

 高校時代から、シュールレアリズムっぽい詩やカフカや安部公房のような短編小説を書いていた小生には、かなり刺激的な詩篇だった。

 

  ●吉増剛造 (よします・ごうぞう)

 1939年東京生まれ。24歳のとき詩集『出発』でデビューして以来、現代詩の最先端を疾走し続けている。
 おもな詩集に、『黄金詩篇』(1970年、高見順賞)、『熱風 a thousand steps 』(1979年、歴程賞)、『オシリス、石ノ神』(1984年、現代詩花椿賞)、『螺旋歌』(1990年、詩歌文学館賞)、『花火の家の入口で』(1995年)、『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(1998年、芸術選奨文部大臣賞)、『ごろごろ』(2004年)、『表紙omote-gami』(2008年、毎日芸術賞)など。『我が詩的自伝 素手で焔をつかみとれ!』、『GOZOノート』(全3巻)、『心に刺青をするように』を2016年に刊行、同年秋にAlice Iris Red HorseをNew Directionsから刊行。

 朗読パフォーマンスの先駆者としても知られ、日本各地およびフランス・イタリア・アメリカ・ブラジル・韓国などで詩の朗読を行なう。2006年から「gozoCiné」を発表。詩のドキュメントともいえる映像群は、2011年に52作品が一挙上映され、現在も進行中。
 2015年、長年にわたって広い領域で詩の可能性を追求した業績で、芸術院賞・恩賜賞を贈られる。

 

 ちなみに、キリンジの曲にもこの詩にインスパイアされた、「♬流星の刺青をまぶたに刻め~」(『野良の虹』)という曲がある。 

 

   さらに、ちなみに、・・・ 『流星に刺青』という句集もある。

 

    *そこで、まとめに一句。

                  晩夏万感流弾に刺青   ひうち