ひかりのまま  【12句】  加那屋こあ

 

             *1971年生まれ、男性、東京都在住、現代俳句協会会員

             『朝日新聞』2026年8月5日(夕刊)より

 

残響のなかで生きている夏雲

 

カラー剪(き)るシンクに皿がまだ残り

 

白シャツで夜を渡ってゆく少女

 

藻のかげに影がかさねる熱帯魚

 

ブローディガン読む夏掛(なつがけ)にくるまって

 

晩夏の約束ひかりのまま揺れる

 

ポンポンダリア抽斗(ひきだし)に夢のメモ

 

対岸が燃えサルビアは深い青

 

烏瓜(からすうり)咲く舌打ちのように雨

 

杭深くふかく打たれて夏の果

 

雫(しずく)まで見える 文学が涼しい

 

八月の花は凭(もた)れて眠るかな

 

 

*流儀(新・旧)バランスのとれた(どちらもある)俳句という印象。

 個人的には、2句目、8句目、9句目、が好きだ。