紫野式部 20句 2024年5月
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はつなつの丸竹夷に「押し」おいで
なにものにも染まらぬ子ども桜の実
生けるものみな「あはれ」と思う新樹光
さよならに三角四角五月くる
不可解な間取りの家の夜を金魚
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手品師の手をすり抜けて蛇の衣
麦の秋大金持ちのベタ俳句
夏兆す伏線回収されぬまま
はつなつへはやめに小さなお葬式
躑躅坂のぼってまがってまた躑躅
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紫野式部の墓のはつなつへ
角刈りのおんなの刺青薄暑光
青葉風三門抜けて二階まで
三門をあがって二階へ古茶新茶
一休も利休も休む薄暑かな
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ぶっけかけて丸亀うどん青葉寒
花は葉に姉三六角ひとだかり
青胡桃原始男子は役立たず
ひと波乱あって沈黙青葉風
記念日がどんどん押して五月来る