如月小梅* 【最新作30句】
001
百八つ数え柚子湯の義理親子
幾百の千両万両赤具え
二ン月の八百屋に古代魚の化石
ほぼ蟹とほぼほぼ蟹と北帰行
書初めの「唸佛」間違え百万遍
寒明けの踊り念佛百万遍
かくれんぼ炬燵のなかに蜜柑五個
節操と節度をもって「鬼は外」
寒風に負けない豆や洗濯鬼
002
鬼の首落ちて椿のはるみ節
「鬼は外」一節うなる浪花節
如月の女のあたりがざわざわと
皇國の赤子男女子建國日
上賀茂のすぐき畑でつかまった
如月の女の口と月のもの
鍵穴を覗く(のぞく)ゾクゾク細雪
地虫出づ手配写真の五十年
003
如月を水のはじまる微弱音
節穴をのぞいて春の兆す影
理科室に眠る古代魚水温む
ものの芽を押し出してゆく澤の音
白椿ポトリと水の生まれたて
二ン月のチョコに古代の化石跡
穴馬とバレンタインの肩透かし
チョコレート早めに貰う紀元節
ニン月のンのあたりをパパラッチ
如月の河津の花の下に坐す
*なお、表題の「如月小梅」は、劇作家(故人)の如月小春とも、小梅太夫(チッキショー!)とも、
関係がないことをお断りする。