解剖台の魯山人  【2024年2月 60句】

 

 

001

 

曲がりかど幾つかあって石蕗の花

裏金のオスソワケする年賀客

裏金をブーメランして海鼠喰う

「じしんない」なんて言うなよ元日に

短日の解剖台に魯山人

寒北斗句座の全員失禁す

逃げ足は十点満点黒マント

白足袋の姿勢はきりり花街ゆく

数え日や誕生会に引き出物

つごもりをネコとネズミと皿洗い

 

002

 

根深ぬめぬめぬめぬまのあたりぬめ

血の皿をさらりと舐める大晦日

玉という玉をかくして山眠る

クリスマス猫と鼠と皿洗い

クリスマス出町王将皿洗い

柚子酢橘カボスを混ぜて味ぽん湯

喧嘩して柚子湯につかる犬と猿

竜の玉ころころ古来稀となり

ラスボスに阻まれてなお聖夜ゆく

ただ過ぎる大つごもりもその次も

 

003

 

新年会四の五の言わず三次会

雪兎いわさきちひろの画集へと

寒鴉オレのイタイを生駒山

クリスマスイヴにマッチを売るオトコ

屠蘇どうぞ糸目つけない裏の金

人参と金の値下がり待つウサギ

お年玉大金持ちは喧嘩せず

大根の大事なとこが見えたまま

前ぶれも前戯もなくて散紅葉

なんとなくこれが淑気か午前四時

 

004

 

ついたひとつかれたひととくう雑煮

風に汐白浜行きの初電車

七種のおかわり三回していいの

屠蘇かけてキーウクリミアパレスチナ

敦賀湾木枯らし海と湖を舐め

かぶりつき忘れちまって冬林檎

南天の千両万両成らぬ金(きん)

歩き癖どこか似てきた寒雀

七種や金の成る木の種のタネ

初詣むかし辿って誰の土地

 

005

 

南禅寺瓢亭順正薬喰い

冬晴れをキリンになってペロリロン

上賀茂をすぐきの立て札まで畑

看板はシロフクロウの岡田くん

ヴィ―ガンの僧侶がひとり生姜鍋

忘年会四の五の言わず三次会 

寒鴉オレのイタイは六甲に 

雪兎いわさきちひろの画集へと

短日の解剖台に魯山人

下腹に一物もって年賀客

 

006

 

綿入れのねんねこ抱いて懐古する

寒北斗句座の全員失禁す

逃げ足は十点満点黒マント

白足袋の姿勢うつくし花街ゆく

戦場でなくてよかったクリスマス

クリスマス・イヴにマッチを売るオトコ

エッシャーの窓に裏窓反社鍋

てっちりを食ってピリピリしたいなあ

キムチ鍋武田も井伊も赤具え

オリーブがとんでくるくるポパイ鍋