日本共産党の志位和夫委員長(69歳)が来年2024年1月の党大会で交代する可能性が党内で浮上している。

 

  ――というか、この新聞報道が出た時点で、決まっている、と言える。


 東京新聞では、


「志位氏の在任期間は歴代最長の23年に及び、党勢回復に向け世代交代を図る時期だとの声があるためだ。後任には田村智子政策委員長(58歳)が取り沙汰される。田村氏が就任すれば同党にとって初の女性委員長となる。その場合は志位氏が2006年以降、空席だった議長に就くとみられる。
 志位氏は2000年11月に委員長に就任。15年には「戦争法」と呼ぶ安全保障関連法の成立を機に、他の野党との「国民連合政府」構想を提唱した。その後の国政選挙では野党共闘路線を進めた。志位氏の手腕を評価する声も根強く、続投の可能性も消えていない。
 一方、党員の高齢化や機関紙「しんぶん赤旗」の購読者数減にも直面。今年に入り、党首公選制の導入を主張した党員2人を除名処分したことで「閉鎖的体質」を疑問視する声も出ていた。
 後任として有力視される田村氏は、11月の第10回中央委員会総会で、従来は志位氏がしてきた党の活動方針を定める大会決議案の報告を行った。」
という。


 まあ、次期委員長が大会議案書の報告をするという不文律があるが、これは、人事を決めているのが権力者だとわかる仕組みで、これが民主集中制の実態ということになる。

 この「民主集中制」については、時代錯誤(いつまでロシア革命かよ)という指摘もある。

 愛知大学の後房雄教授は、Facebookで、

 現行の「民主集中制」の下では、現指導部が指名した候補がほぼ満場一致で選出されるという形が続いているので(これをもって規約どおり「選挙」で選出されていると言うらしい)、指導部と路線は変更される可能性は全くないわけです。
 つまり、民主集中制というのは、民主的に議論して、決まったことには従うことだという共産党の解説とは全く違って、数人から10人程度の支部のなかにおいてしか自由に意見交換することができず、支部をまたいで党員が意見交換することが禁止されている点に核心(というか元凶)があるのです(上級機関が招集した会議だけでは違う支部の党員と議論することが許されますが)。
こうした状況のもとでは、現指導部と異なった意見が党内で新たな多数派を形成できる可能性はゼロです。多少の異論も支部のたこつぼの中に閉じ込められ、他の支部の党員には届かないからです。
 こうして、指導部とその路線は、どうしようもなくなって現指導部自身がやる気になるまでは決して修正されないわけです。このような特殊な制度が民主集中制であって、これこそが共産党の固有の特徴です(当然ながら、暴力革命、軍事闘争を想定して作られたものです)。
 松竹さんや鈴木元さんの党首公選論は、もしそれがきちんと実施されれば、複数の党首候補(とその路線)をめぐって、党内で支部横断的な選挙運動と意見交換が行われ、それぞれの候補の支持者がはっきり表面化することになります。そして、選挙後は、多数派と少数派の存在が可視化することになります。これが本来の民主主義ですが、共産党はこれを分派として絶対に許容しません(編集者の松竹さんが鈴木さんの本を担当したことが分派とされたくらいですから)。
 現在、松竹さんは、規約に基づいて、除名処分の再審査を来年1月の党大会に請求しており、それに向けて党員や代議員たちに向けて自らの主張をリアルでもネットメディアでも発信していますが、この規約からすれば当然の活動も、悪質な分派活動として赤旗で批判されています。再審査が満場一致で否決されるのをただ黙ってみていることが正しい行動だというのでしょうね。
 こうした「日本共産党の民主集中制」という原理がある限り、党内が閉塞的になるだけでなく、現指導部の誤りの発見と修正は常に手遅れになったころにしかなされないということが繰り返されるでしょう。何が起こっても、ひたすら自画自賛が続くしかないわけです。

と、指摘する。

  ーーでは、そもそも、共産党組織は、なぜ「民主主義制度」ではいけないのだろうか?

  あれだけ、民主青年同盟、民主商工会、民主医療連盟、… など、関連団体の名称を「民主」組織(=民主団体)と呼称しているのに、だ。


 「民主制」ではなく「民主集中制」(そもそも「民主集中」は革命軍事組織の規律形態である実質的な「上意下達」からきている)なのは、共産党は、革命のために、最高の統一党(パルタイ)のために、分派そのものも、その萌芽である分派活動を、反党行為とみなし、処分(除籍・除名)の対象としてきたのだ。

 このように、「民主集中制」には一定の歴史的理由や根拠があった。
 諸権力(国家権力やコミンテルン系の外国権力)やそのスパイのからの防御(組織防衛)という側面だ。
 かつて、党の副委員長だった袴田里見氏、名誉議長だった野坂参三氏、などがそうだ。

 また、民青指導部内部で分派活動あったとされる「新日和見主義」キャンペーン(これは評価が分かれるが)などもそうだが、

   ーー 現在その、「思想的党防衛」と「国民・市民に開かれる」ことと、どちらが大事なのだろう、と疑問に思う。

 わたしは、昔ながらの思想的党防衛論(これにも理はあるが)よりも、国民・市民に開かれた民主主義政党であろことのアピールのほうが大事だという政治的判断とその方向性を選択してもらいたいと思う、

 そのことに関連して、前出の後房雄教授は、次のように述べている。

 共産党の体質のゆえに、現在また共産党忌避論が強まり、孤立を深めているというのに、よく自画自賛ができるもんです。すべては「反共主義」が悪いのでしょう。
 このような現指導部のご指名によって、1月の党大会では、女性の田村智子氏副委員長が新委員長に選出されるようですが(中央委員会総会で大会議案の説明を担当したことがその証拠とされる、かつてのクレムリノロジーみたいなもんです)、そしてそれはいいことではありますが、せめて他の政党のように、演出でもいいから複数候補が競うちゃんとした選挙によって選出されるなら随分世論の評価も違うのでしょうが、それこそないものねだりということになります。
 共産党だけが前のめりの野党連携にとっても、共産党のこうした実態が明らかになってくると、その数パーセントの票が差し引きプラスなのかマイナスなのか、微妙なところですね。・・・と。

 == ひうち注記 ==

 *ネット(SNS)の機関検閲

 ちなみに、ネットの普及によって党員間の意見交換はかなりやりやすくなったわけだが、それだけに、共産党中央は、ネットをチェックして摘発に躍起になり、SNS検閲が行われることを危惧する。
これとの関係で言えば、日本共産党員有志が運営する自由な意見交換のフォーラムだった「さざ波通信」が、2016年に配信停止になった。圧力があったかどうかは、不明だが、本当の理由は明らかではない。

 **さざ波通信 1999~2016 https://sazanami-tsushin.netlify.app/ 

 【開設にあたって】
 このホームページは、複数の現役の日本共産党員によって開設され運営されるもので、日本共産党の政策、綱領、規約、歴史、理論、政治行動、イデオロギーについて、および現代日本政治における日本共産党の役割、位置、課題について、批判的見地から検討し議論するサイトです。そして、このような検討と議論を通じて、日本共産党のよりいっそうの発展強化と、日本および世界の民主主義的・社会主義的変革に、ささやかながら寄与することを企図しています。
 私たちの力はきわめて微力であり、それが直接もたらす結果も、せいぜいのところ、大海のごく一部にさざ波を引き起こす程度でしょう。しかしながら、さざ波が大きな波涛の前触れになりうるように、私たちのこのような努力が大きな変革につながることを祈念して、ここにホームページを開くものです。多くの方々のアクセスと参加をお待ちしています。
 ーー『さざ波通信』編集部

 さいごに一句を。
           待春や革命をまだ待つゴドー  ひうち