🌸 仏法僧  ――2023夏50句

 

 

001

もめごとはもめごとのまま梅雨あける

罌粟の花ひらく極楽すぎてから

しのび泣きもらさずもらす走り梅雨

梅雨冷えの汝が窓に棲むオム・ファタル

二子玉(にこたま)を下衆の極みの桜桃忌

紙魚走る太宰治が九十円

梅雨晴間食う寝るパイポ無精者

オトコ飼うオンナの虹の根のあたり

窓辺には守宮いっぱい窓いっぱい

窓と窓仕切りはずして走り梅雨

 

002

窓と窓開けてぞ今朝の梅雨晴間

雨だれのさみだれ楽譜(スコア)のはらり落つ

梅雨闇の乳房かくしてブラをとる

毒溜(ドクダミ)とボットン便所は北どなり

十薬の綿棒より出でなお白し

梅雨晴れ間トーマス、パーシーさあ鉄橋

紅のきしみをこえて曲がる虹

丁半で決まらぬ勝負天道虫

廃屋に凌霄垂らす甘えん坊

罌粟の花ひらく地獄の鎌の振り

 

003

夕凪やコーラ流して波まくら

砂山にドンペリ零して海は夏至

五月来る宇品の海に逃げ泳ぎ

芸のため一子相伝ホトトギス

黒南風吹く息苦しいほど抱かれたい

白南風と朴(ポク)と海見に行かないか

コークハイ飲み干す砂に海の夏至

夏燕お化けフォークの逆上がり

仮眠して蜆蝶ふる午後三時

すかんぽを歯牙ってかえる生家まで

 

004

梅雨ナマズ生ゴミばかり火曜日は

なつメロのカンパリソーダをもう一杯

夕立雲あくまで天使のお通りだ

梅の雨送って迎えて戻らない

花栗はなぐりそこはカルキを抜いてゆけ
黒南風と怪鳥快調海潮音
七月をポチンコチンとつきあたる 

白南風や白日の白目を剥いて自白して
キラキラのララは七月生まれじゃない

愛人の舌にからまる雨蛙

 

005

門番はわたしのなかの白夜宮

どれくらい住めば都か薄暑光

きみ帰る麦の稔りの風のなか

おこぼれの盃こぼす走り梅雨

青葉雨こころに落ちていったまま

落し文シェイクスピアの偽署名

仏法僧午前二時だという門限

みず水母うみ海月いて波まくら

辛抱に辛抱かさね生ビール

鯰喰う坊さんが屁をこくあいだ