🌸 谷崎ナオミ 【2022夏50句】
001
夏のままいつまで対でいる男
燃えつきる昭和の海に夏おとこ
七月のゲイとおこげとやおいめく
七月の小股に渇く砂のあと
あじさいの青ばかり出る砂時計
睡蓮の目覚めや午後の時間割
柔肌にからまる薔薇の逆恨み
銀色にぬめる刺し傷なめくじり
いたぶれば谷崎ナオミ油蝉
若頭みずから対峙して百足虫
002
差し押さえ蛞蝓になる谷ナオミ
雨傘を日傘にかえて半夏生
ひきずれば京も近江もなめくじり
不如帰ないて持続化給付金
樹木名羅甸片仮名沙羅双樹
ステテコを履いたまんまでオヨビデない
ややすねて本間千代子のよる夜店
美人という伏字読み解く緑の夜
003
せめてなら過去を消したいナメクジリ
「敵の敵は味方」的な瑠璃蜥蜴
目的は海じゃなくても夏の所為
枇杷の種ぬるり目的外使用
花栗の溢れ目的外使用
蛞蝓やや目的的犯罪行為論
そのうわさやや的外れだがクラゲ
沙羅双樹落ちてしゃがれてボヘミアン
ぜったいに背中押すなよカタツムリ
眠らない白夜を閉じてレンドルミン
004
夏の夜の夢グループのDVDでえぶいでえ
ほうたるこい誰何されては水底
香水のあとの約束破られて
メタ少女放置しておく夏野かな
ポコアポコ微弱炭酸水すまし
あじさいや京も近江もおなじ水
サーフボードまっすぐ立てて海を聴く
鰻食う圓安國産萬福寺
対岸を半裸全裸の夏祭り
005
大将は裸じゃなかった花はちす
凹凹に凹られ土用鰻かな
水着痕破れ千切れて青鮫
盆帰り朴訥だった凹のひと
牡丹青丹ゑゑゐままよと札を切る
告白はなべて赤裸々蛇の衣
ビーナスもダビデもみんなララ裸体
ひまわりやまだふみもみず宇国境