🌸 水辺から水仙までのルサンチマン* __ブログ1000回記念 俳句 2022
001
正しくは夫夫別(姓)藪柑子
主治医には言えないことも冬の虹
「ホトトギス」正(まさ)しく正(ただ)しい女正月
冬銀河迷宮をゆくオミクロン
きさらぎのせせらぎ二月をさらさらと
疫病の名前も忘れ日向ぼこ
一列に並んでください葱背負って
謎めいた出自そのまま冬銀河
追試終え自習の時間冬深し
火事飛火寒夜侃侃馬鹿力
002
葱かじる類人猿の他人事
考えるひとの姿勢で冬籠り
恵方より飛んで翔け来る鴨の客
冬日差す陳列棚に磯自慢
アクリルを飛び越え仕切る鍋奉行
水辺から水仙までのルサンチマン
ちゃんこ鍋妻のホンネの隠し場所
雪催い愛という字のある性愛
ターナーの海に春待つ難破船
冬の星きらり耳鳴り電子音
003
そこねぶったらあかんのんえェ雪兎
雪解水まだ見ぬヒカリの印象派
赤鬼にもなろう福さえ来るならば
ニン月の果てまで三分GOタクシー
淡雪や明治はミルクチョコレート
春立ちて水溢れ出す指の先
禰豆子にも柊挿して鬼は外
柊を挿して鬼滅の炭治郎
ひとしきり鴉鳴きゆく今朝の冬
崖を谷を春のリボンが駆けてゆく
004
春浅し巣ごもり抜けて丘に立つ
春立ちて水溢れだす指の先
きさらぎをせせらぐ大佛次郎賞
水ぬるむ魚がつばさを夢見る夜
流氷を舐めてしょっぱい海に出る
手も足も絡めてまわる雪解川
北北西特選開運恵方巻
福豆と言うと雖も煎り大豆
蒼深き海に積もらぬ涅槃雪
呼吸法駆使して挑む鬼やらい
005
願わくば彼のきさらぎの谷の底
京都市左京区鞍馬本町山椒の芽
春寒を廊下の奥に立たせてろ
ヴォーカルがサポートメンバー鬼は外
魚をみな濡らして春が来たらしい
是非是非と是非もなければ糸桜
誤嚥して春のはじめを深呼吸
春暖炉ひとの隙間は冷たくて
春眠や象の瞼にふれるまで
さんがつのぽるとがるからふくけむり
*ルサンチマン (ressentiment)とは、一般に、怨恨や妬み・嫉みを指すと言われるが、この言葉は、ニーチェによって再定義されてから、生の哲学上の独自の概念となったと言われる。