🌸 瑠璃色の蜥蜴  ――50句 2021夏

 

▶001

この土地の所有権なし百日紅

朝焼けが胸焼けするぼど地平線

いまという無常の途上夏椿

灸花地頭と地主の地鎮祭

蛙ぴょんとんでコロナのリバウンド

滴るや汗腺観戦また感染

走り梅雨越えてゆけない田原坂

銀座から赤坂新宿ナメクジリ

うんチョコのスイカの種をペロリとポイ

けだしよし、まとめて言えば焼きなすび

 

▶002

つぎつぎと凌霄花(のうぜん)落ちて不能犯

可及的スピード感もてトコロテン

坂道に君見える窓薄暑光

日翳りの坂道ゆれて蝉しぐれ

海開く磯野サザエの左巻き

紙魚はしるどこまでゆけば雲母坂

ほんとうはピッピョピピョピピ時鳥

朽ちゆける紫陽花の世をながめせしまに

夕立をのがれて小磯美術館

ブラジャーをはずしたままで海開く

 

▶003

タウリンを一〇〇〇ミリグラム夏の果て

胸焼けがするほど紅いぜ朝焼けは

とりあえず栄耀栄華夏椿

可罰的違法性なし瑠璃蜥蜴

梔子やおとこ同志の赤い糸

オリパラのイレズミ入れて蛇になる

黒南風や運河に夜がまたしみる

この闇をふりむかないで遠花火

帚木にまたがるキキララほうき星

ひとごとに刺さるさらさせ水母浮く

 

▶004

お流れのワクチン三回ルル三錠

断種され命を量る蔦青し
全種類チケット買って夏季休業
マンボウの出ない県からもらうアサガオの種
青蔦や蓼食う虫もライクイット(Like it)
残暑残念惨敗ざんしょ空手形

つくづくとはるかなかるかな秋の蝉
息苦し生き苦し日々釣り忍

秋立つやとかく流れてゆく浮き世

秋暑し掻いても掻いてもいかぬ棒

 

▶005

マンボウの出ない村から木槿落つ

五輪開くついでに開く未草

両目から鼻への抜け道ダリアぽん

日盛りや証文握る土左衛門

卜(うらない)はアキストゼネコ花樗(はなおうち)

玫瑰のむこうをロシアの貨物船 

凌霄花地縁血縁幼保園
目鼻立ちハッキリクッキリ金魚釣り

夏草の流れて消えて念仏寺

さとふるの業界用語猫じゃらし