🌸 初昔(はつむかし)ーー新年に去年を振り返ることば(2021新春俳句60句)
▶001
そのあとも炬燵のなかでもめている
号令はみぎむけひだり赤海鼠
万象に初の字つけろ知らんけど
御降(オサガリ)をはずしてもなお蓬莱さん
新玉の年玉もらう龍の玉
米小雪命運わけて毒林檎
初春の大路をあるく牛ひいて
このさきは柊野別れ(ひらぎのわかれ)寒夕焼
▶002
寝るものをすべて眠らせ冬薔薇
暮早しゴワサントーサンおかあちゃん
冬枯れのおんなおとこや飾り窓
あの橋を曲がったところにフェイクファー
とりあえず席題みつくろい初句会
マスクなる仮面の披講初句会
マスクとは安心仮面去年今年
「窓と窓」開けられないで初鴉
あの橋の袂(たもと)分かてば真知子巻き
軟膏の看板消えて花八手
▶003
初明りフレディ迎える硝子窓
成人式なりたくはない子どもにも
珍狆は鱈腹食ってどんど焼き
楪を栞に挟む上梓かな
あかぎれの浪花千栄子にオロナイン
着ぶくれて鬼のいぬまに洗濯機
しんしんとストーブはさんで夜が明ける
目覚めると鬼になってた湯婆(ゆたんぽ)抱く
湯婆抱く鬼だったのか禰豆子
嚙まされて竈門禰豆子の鬼やらい
▶004
荒海や初荷(年越し)海鮮出前便
にぎやかし一妻多夫の初詣
修羅のごとく仏のごとく去年今年
冬北斗ミスチル歌う「君が好き」
雪月夜スマホにとどかぬ着信震
潔しおとこは過去形寒椿
山茶花さざんか隠れてかくれて路地裏に
レーニン像大志抱いた寒北斗
マスクした最後の晩餐初昔
足跡を辿っていけば初昔
▶005
丑年や年の始めの丑の刻
牛後とて午後は来たりぬ今日の春
牛後とて午後には晴れるおらが春
鏡餅画いて「せうゆ」(「しやうゆ」)とかくきけこ
シタアルをかきならすべし枇杷のはな
まなざしの内側にいてシクラメン
尿漏れも初の字つけて、知らんけど
蠟梅や四馬路、虹口をそぞろゆく
ぬけぬけと初恋騙る冬薔薇
雄雄しいと凛凛しくはなく大根引く
▶006
北国の空は泣いてるトナカイも
注連縄に巻かれ解けぬ丑の刻
半歩ずつ牛歩戦術去年今年
読初めの米国憲法第九条
丑松の恋慕叶わず葱雑炊
焼餅を焼くな「せうゆ」をさしすせそ
かのひとは妻とも違う冬牡丹
冬ざれの海へターナー絵筆擱く
曲がれない角は曲がらず濡れ落葉