すでに先日のブログでも紹介したが、9月18日、官邸で首相と会談した武田総務相が、記者団に対して息巻いた。

「100%、やる――」  

菅首相の目玉政策のひとつである「携帯電話料金の引き下げ」について、事務方に対して具体的な検討を進める指示をすでに出したことも、武田総務相は明らかにした。

首相直々に「至上命令」と伝えられたのか、「1割(値下げ)とかいう程度では改革にならない」とまで、ぶち上げた。  

 

菅首相と大手携帯キャリアとの因縁は、菅首相が官房長官を務めていた2018年8月に、「携帯電話料金は4割下げできる余地がある」と発言したことから始まった。第1次安倍内閣での初入閣が、電波を所轄する総務大臣だった菅首相だけに、この政策は「悲願」と言えるものだ。

これまで、その菅首相の前に “天敵” として立ちはだかってきたのが、ソフトバンクグループを率いる孫正義氏だった。 「2018年11月、孫正義氏が決算説明会の場で菅官房長官の『値下げ発言』に触れはしなかったものの、『(新料金プランは)実質4割値下げにあたる』『ギガバイト単価は欧米事業者と比べても、我々は世界でもっとも安い事業者のひとつではないか』と “反撃” したこともあった」(経済紙記者)。

 

経済ジャーナリストの松崎氏は語る。

「2018年の『値下げ発言』の際には、菅氏が発言して以後、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクという大手キャリア3社の時価総額は、合わせて3兆5000億円も減った。その結果、各社は政府の顔色をうかがう形で、通信料金を2割から4割下げられる料金プランを設定した。」

「さらに、『楽天モバイル』の参入を後押しし、最近では番号移行制度の手数料の原則廃止も進めている。企業間競争を煽って、料金値下げに持っていこうということだ。しかし、想像以上に消費者側の “大手志向” が強く、現状は政府の思惑通りの値下げが実現していない」

そのため、携帯キャリアへのさらなる圧力を強めようと、菅首相は自民党総裁選の段階から、大手キャリアの寡占状態が続くなら、携帯電話事業者が支払う電波利用料の引き上げもやむなし、と牽制をしてきたが、それには「電波法」の改正が必要であり、時間がかかる。

 

「そこで菅氏は、“二の矢” を準備していた」と、ある政治部記者は話す。

「菅氏の官房長官時代、長く内政担当の官房副長官補を務めた古谷一之氏が、9月16日付で公正取引委員会の委員長に就任しているのです。」「この人事が内定したのは、安倍政権時代の2020年3月ごろ。もともと菅氏は、『古谷氏を官房副長官にしたい』という意向を持っていましたが、これが安倍前首相に蹴られ、菅氏は『官房副長官がダメなら』と、すかさず古谷氏を公取委員長に据えたのです。」 「古谷氏は就任会見で、『料金値下げが実現するよう貢献したい』と、菅氏の意向に沿うような発言を早速しています。公正取引委員会には、消費者保護目的の排除措置命令を出すことで、携帯料金の是正を求める権限がありますから」と。

さらに、2020年7月に総務省官房長に就任した前内閣総務官の原邦彰氏は、古谷氏とともに2019年の “お代替わり” について宮内庁との折衝を担当するなど、互いに気脈が通じている。

「この人事も、原氏を総務事務次官に据えるため、菅氏が差配したといわれています」。 “天敵潰し” へ、菅首相が仕掛けた包囲網は完成しつつある、と。

 

しかし、この見方のスジは正しいのだろうか? 話しがうまく出来すぎている。

菅氏が楽天の三木谷氏と気脈を通じていれば、別の見方も出てこよう。

物事はそう単純ではない、というのが、常なのだ。