NHK朝の連続TV小説=通称「朝ドラ」では、このところ、主人公に女性ばかりではなく、男性も取り上げるようになった。また、女性をとりあげる場合も、苦労多き女性像がほとんどで、良き伴侶を持ち苦労を重ねながらも人生をおくる、という女性の成長小説のようだった。朝の時間帯に、お茶の間でTVを見る女性を念頭においた企画だった。そのパターンが多すぎて視聴者がこのパターンに飽きたということか、今度は、「まんぷく」「エール」など男性の成長をモデルとするものに変化してきた。しかし、いずれこれも飽きられるかもしれないと思う。「おしん」のときのように、TVを見る視聴者は、必ずしも、自分の生活経験とのなかでのカタルシスを得るためにドラマを見ているということばかりではなくなった。というか、その動機が、定量的に分析できにくくなったような気がする。

 

そこで、変化球を提案する。

われわれは、自分の経験では得られなかった人生というものを仮想体験してみたくて、小説、映画、ドラマを見ることが多い。その意味では、いわゆる、クイア(LGBTs)のシュトルム・ウント・ドランク=ロマン(疾風怒濤の成長小説)がちょうどよいのではないかと思うのだ。

また、ちょうど、昨年、あのカルーセル麻紀の生い立ち、その人生をモデルにした小説が出版された。カルーセル麻紀と同郷(釧路)出身の直木賞作家・桜木紫乃の『緋の河』(新潮社、2019年)という小説だ。

 

カルーセル麻紀は、現在77歳、ニューハーフタレント。本名:平原麻紀、旧名および出生名:平原 徹男、だ。1960年代後半には、TVのバラエティ番組でよく見かけたが、最近は、元男性であることをネタにした痛快なトークが売りで、お笑い芸人の演芸と歌謡ショーを組み合わせたステージを繰り広げている、という。 

LGBTに対して世間の風当たりが強い時代から、芸能界で活躍し続けてきたカルーセル麻紀だが、桜木は、同郷でカルーセル麻紀の生き方に惚れ込み、小説に書こうと決めたという。

 

これは、いろもの芝居ではなく、かなり重厚なものになるだろう。

言い過ぎかもしれないが、ひょっとして、「おしん」の再来になるかもしれないのではないだろうか。