あなたは、ジューシー・フルーツの歌っていた(アルバム「27分の恋」収録の)「夢見るシェルター人形」という歌を知っているだろうか?

 

 そもそも、ジューシー・フルーツというバンドは、テクノポップ系のオモシロバンドというコンセプトだったと思う。近田春夫のプロデュースによるキャッチ―な音楽(+隠し味としてのひねり、アイロニー感覚)をモットーにしていたように思えた。

デビュー曲の「ジェニーはご機嫌ななめ」や事実上高田みづえとの競作「そんなヒロシに騙されて」のベンチャーズ+GSサウンドなどは、批評性もある印象だった。

 

 この「夢見るシェルター人形」は、レコード発売直後、歌詞が不適切ということで、放送禁止になった。この放送禁止は、通常の、差別、原発、などの社会問題をリアルに歌詞にしたというタイプの禁止(自粛という規制)ではなく、一般人にはアイロニーがわからない、というタイプのものだと思える。

 

 この手のアイロニーをまともに受け止めてしまう一般人は、はたしてどれだけいるのだろうか? 考えてみてもいいと思う。

以下、歌詞(訳詞?)を紹介しよう。

 

   夢見るシェルター人形 

 

   (1982年:ジューシー・フルーツ、訳詞+作詞:ちあき哲也)

   [原曲:夢見るシャンソン人形、フランス・ギャル、

     作詞・作曲:セルジュ・ゲンズブール 〕

 

私は夢見るシェルター人形
一日地下室で溜め息つくだけ
約束延ばしてまた雨降り
こんなにあの人を想っているのに
 

あれからママはどこかに行ったわ
あれからパパも帰ってこないわ
 

  *↓ 問題(放送に適さないと問題)になったと思われる箇所 

 

    星よりキレイな核ミサイル
    弾けて街中が光になったの
    授業が無いのは嬉しいけど
    一人じゃ愛なんて習えもしないわ
 

 あれから夜はどこかに行ったわ
 あれから朝も帰って来ないわ
 

 友達代わりのコンピューター
 ホントの太陽の真下が好きなの
 私は夢見るシェルター人形
 触れたら解けそうな危険な雨でも
 このままあの人の胸まで走って
 二人の物語続けてみたいわ

 

 

 しかし、この曲は、全体に逆説的な風刺が効いていて、問題にする方が問題なような気もする。作詞家のちあき哲也の訳詞?も、うまい。

 ちあきは「飛んでイスタンブール」のような曲や「吾亦紅」のような曲の詞も書くのだ。やはり力があるんだなあ。

 

 

 いま、イラン、北朝鮮、だけでなく、核保有国、核を本気ではなくそうとしない?国連加盟諸国でも、ぜひ日本語詞で聞いてほしい曲だ。

 

   そこで一句。   

           八月のチキンゲームに核抑止   ひうち