日本国憲法は、その第二章 戦争の放棄 のなか、

 

第九条  第一項 ①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

第二項  ②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 

と定めている。問題は、2項である。1項は、これを改正すると憲法の同一性がなくなるという共通理解がある。この共通理解が曲者なのだが。3項を追加し、一種の加憲にする方向で自民は与党をまとめようとしている。

 

安静保障関連法案=平和安全法案は、大騒ぎの法案だった189回国会(2015年通常国会)衆議院閣七二号「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」の内閣提案理由は以下の通りであった。
 

 理 由
 我が国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に際して実施する防衛出動その他の対処措置、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に際して実施する合衆国軍隊等に対する後方支援活動等、国際連携平和安全活動のために実施する国際平和協力業務その他の我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するために我が国が実施する措置について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

上記の提案理由に基づき,当該法案の第1条が以下のようになっている。

 

(自衛隊法の一部改正)
第一条 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
  第二条第五項中「第九十四条の六第三号」を「第九十四条の七第三号」に改める。
  第三条第一項中「直接侵略及び間接侵略に対し」を削り、同条第二項第一号中「我が国周辺の地域における」を削る。
  第二十二条第二項中「原子力災害派遣」の下に「、第八十四条の三第一項の規定による保護措置」を加える。   <後略>.


当該法案の中で、自衛隊の定義に関わる自衛隊法第三条の文言の改正は,非常に重要な改正に思うのだが、どうだろうか。
当該法案について、他の難しい用語の定義ばかりが議論されていて、最もプリミティブな上記条文は、ほとんどニュースにもなっていないように思う。
自衛隊法3条改正は,自衛隊のそのものの「定義」を変える改正である.

自衛隊の任務の条文をなぜ変える必要があるのか,上記法案提案理由のみから,導き出すことができないと思われる。だから,自衛隊の任務の条文を変更する理由が知りたいのが、法案提案理由には、個々の条文変更理由は記されていないのでわからない。ようは、勝負は、憲法9条ではなく、自衛隊法3条なのではないか。

 (自衛隊の任務)
第三条  自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
2  自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一  我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二  国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3  陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。

 

改正されたこともあるが、もともと自衛隊法3条は、憲法9条改正案の先をいっていた。

「防衛」も「国際協力」もしかりである。また、9条の解釈として自衛隊法3条が規定されたとみれば、「憲法附属法が憲法の解釈を決める構造になっている」という大石眞・京大名誉教授の「憲法関連法規の建付け」の解釈は、自衛隊法3条が、憲法9条の解釈を、逆に規定し、解釈指針を示していると言える。

したがって、すでに憲法9条の事実上の改憲が自衛隊法3条でなされているのではないか、というのが、わたしの見立てである。いかがだろうか?

                                       

                                                【ひうちくん】