今回は、敬愛する三木義一青学大学長の興味深いタックスヘイブンのインタビューから引用しつつコメントする。先ごろタックスヘイブン(租税回避地)での脱税者?リスト「パラダイス文書」 の一部が公表された。また第2弾が今日あたり発表されるらしい。
―― 三木学長へのインタビューによると、以下のようだ。
グローバル企業による国境を越えた節税策に、厳しい目が注がれています。少しでも税負担を減らしたい企業と、何とか税を集めたい国との戦いかと思いきや、話はそう簡単ではないようです。青山学院大の三木義一教授(現在学長)に聞いた。
■国と企業の力関係が逆転 ――企業の節税がクローズアップされているのはなぜですか。 グローバル企業が国家をしのぐほど大きく成長し、税の問題がそれぞれの国だけでは解決できなくなってしまっているからです。昔は国の方が企業よりずっと力が大きかったので、国の枠の中で物事が収まっていました。ところが、経済のグローバル化に合わせて企業が国境を越え始め、力関係が逆転してしまったのです。いまや企業は、経済活動や税負担の都合で国を選び、利用する立場にあります。 こうなってしまうと、厳しく税を取り立てるのではなく、逆に負担を減らして少しでも多くの企業や富裕層を呼び込もうという国が現れます。特に小さな国は、それぞれの企業から受け取る税が減っても、それ以上にたくさんの企業がやってきて税を納めれば税収は増えると考えるのです。これがいわゆるタックスヘイブン(租税回避地)です。英領ケイマン諸島などが有名ですね。ちなみに、「税金天国」というイメージがあるかもしれませんが、ヘイブンはheavenではなくhaven、「避難所」という意味です。 ――タックスヘイブンはどこで始まったのですか。 タックスヘイブンの原型は、19世紀後半、米国で生まれました。ニュージャージーやデラウェアといった小さな州が、会社を立ち上げやすくするという方法で企業を呼び込み始めました。初めは国内で企業を奪い合っていたのが、これをまねした欧州では国境を越え、他国の資本まで集めるようになっていきました。 税制を含む本来のタックスヘイブンが成立するきっかけをつくったのは、英国の裁判所です。1929年、「英国で登記されている企業でも、管理・監督が海外で行われていれば納税義務を負わない」という裁定を下したのです。英国としては、所在地と実質的な本拠地が一致しないケースが増えるなかでルールを整理しようとしたつもりだったのでしょうが、この裁定は大英帝国全体に適用できたので、結果的に世界中の英国領がタックスヘイブンになれる道を開いてしまいました。 国は独自の税制をつくって企業を呼び込み、企業は税制の違いを巧みに使って税負担を軽くしていきました。ライバル企業がやり始めたら、自分たちもやらなければ不利ですから、企業は節税競争に走ります。大きな利益を上げている企業ほど節税の効果は大きくなり、本来税を納めてもらえるはずの国にとっては痛手になります。アップル、グーグル、アマゾン・ドット・コム、スターバックス……そうそうたる顔ぶれの企業が、行き過ぎた節税策を税逃れだとして批判されています。
■最強の節税アドバイザー ――企業の節税策はいずれも合法の範囲です。「消費者が安い商品を求めて店を選ぶように、企業も国を選べるべきだ」という意見もありますが、なぜ税逃れとまでいわれてしまうのでしょうか。
一見もっともに聞こえますが、その理屈には大きな問題があります。確かに、企業活動をしやすい国を選ぶのは企業の自由かもしれません。しかし、それならば、税率の低い国だけで商売すべきですよね。節税策が批判されているのは、本当は世界中で稼いでいるのに、さまざまな仕組みを通じて税率の低い国に利益を移し、税負担を減らしているからです。 たとえば、アップルの節税策は「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれています。法人税率の低いアイルランドに利益を集めるのが柱ですが、アイルランドに法人を2つつくり、片方の管理支配機能を英国領バージン諸島に移した上で、間にオランダ法人を挟むという極めて複雑な仕組みです。他の企業でも、利益を特定の国に移すために、本社あるいは実質的な本社機能を置いたり、巨額の利益を生む特許などの無形資産を低い価格でグループ会社に売ったりという方法が使われています。 こんな仕組みをいったい誰が考えているのだろうと気になりませんか? 中心は弁護士や税理士ですが、実は、税務当局で税を取る側にいた人たちが高い報酬で企業にアドバイザーとして引き抜かれていくケースも多いのです。これには各国とも頭を痛めています。各国の税制をもっともよく知っている人材ですから、企業にとっては一番心強く、国にとっては一番手ごわいですよね。税金に育てられて税務のノウハウを身につけた人が税逃れを助けるというのは、納税者としては釈然としませんが……。
――税を取り損ねている国も、黙ってはいませんよね。 いくら合法でも、こうした露骨なやり方が明らかになれば当然印象は悪くなります。スターバックスは英国での批判を受けて自主的に納税しましたし、オバマ米大統領は節税目的の国外移転に対して「愛国心に背く」と発言しています。米財務省は22日、「タックス・インバージョン」(納税地変換)と呼ばれる、海外企業の買収を利用した節税策を防ぐための措置を発表しました。 とはいえ、税制を企業にとって不利にすれば国外流出が進むばかりです。実際、英国はタックスヘイブンの島々を抱えていますし、米国も法人税率の引き下げをめざしています。日本も法人減税を目玉政策に掲げていますよね。国は、納税を渋る企業とではなく、税を奪い合う他の国と戦わざるをえないのです。
しかし、企業が利益をすべて市民に回すとは限りませんし、恩恵を受けるのはその企業の関係者だけです。そして何より、主権者である国民が本来手にすべき財源が支払われないというのは大きな問題です。その意味でも行き過ぎた節税には歯止めが必要ですし、われわれも「庶民には関係ない」と指をくわえて見ているのではなく、きちんと声を上げなくてはいけないのです。--という内容だ。