ピ・チ・カ・ー・ト  ――俳句50句

 

信仰はイワシの頭紀元節 

立春の右耳かじるロバのパン

如月の三日月のころ水になる 

春浅し「盟神探湯」ぬるめにして裁判

節分の泣く子と地頭とお代官 

うつ病が吊るされたまま寒の水 

寒雀ここ来いここ来いここはダメ

ピ・チ・カ・ー・ト五つならんで春の潮

鬼は外一節太郎が逃げる役

化粧して朱雀大路を春がゆく  

色街に白く染められ梅一輪

うるわしの京の振舞い春兆す (和田仁孝先生還暦祝賀)

月香る髪指先を唇を

雪舟の画に一枚の春のせる 

海市立つ黒船破船磯野ふね

香梅のふふむことなき寒梅館 

鉄舟と海舟のせて花の舟

切りて一艘の舟春の虹  

真実が嘘から咲いて梅香る  

彼岸まで目閉じて緋寒桜咲く  

浅き春眠たき近江の抱き枕

浅春の潮目にのって打つ木魚  

いやいやと舌出す遊び春がもう  

野遊びの果てに地球の端に出る

ここからはおとなの遊び牡丹雪

如月の三日月のころ鎌を研ぐ  

春を追う「ガ」と「ギ」と「ゲ」のつく遊び人

梅匂う遊んでいきなという夜風  

春暁の遊動円木神隠し

長崎で仇に討たれシオマネキ  

春りんね葉っぱのフレディー・マーキュリー

春あらし雄叫びつづけるツッペリン

憐憫は愛より青く春ひかる  

踊り子が輪になってゆく春の宵

 春の雪第二釦がふたつない  

メデューサの首にサロメのなごり雪  

海市ゆく前田前田のドラッカー

大丈夫生えていますよつくしんぼ

奴凧ブルワーカーの使用前

春雷や島耕作の円相場

予の夢の永田耕衣と土を掘る  

おぼろづき指はいくつでジェフ・ベック

梅香る夜汽車になっていったまま  @

春の宵くすりがいっぱい指いっぱい

憲法に例外規定春の果て

弥生尽大団円の長ぜりふ

飛梅や上七軒でひと休み

冴え返る語尾を英語で撥ねBOΦY  

淡雪や百人一句を編纂す

待春や長い別れを待ちぼうけ  

鄙に雛ヒナにはヒナの自尊心

散種する春を何回数えたら